秋の雨
【鑑 賞】 秋の雨庭に灯して眺めけり
明治中期から後期にかけての小説家・尾崎紅葉(おざきこうよう)の俳句作品。
秋の風情が強く感じられる句。
以下、季語「秋の雨」の解説です。
【表 記】
(漢字) 秋の雨
(ひらがな) あきのあめ
(ローマ字) akinoame
【季 節】
秋
【分 類】
天文
【意味・説明】
広く秋に降る雨のことを表す季語です。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
秋の雨いよいよ森を夜に誘ふ
(阿部みどり女)
秋の雨からりと晴れて夕映す
(寺田寅彦)
秋の雨この職変ふる才もなし
(皆川白陀)
秋の雨素十住みたる山科も
(京極杞陽)
秋の雨大正池の砂礫打つ
(高澤良一)
秋の雨月に対して猶悲し
(松岡青蘿)
秋の雨とくや米坡が白髪染
(尾崎紅葉)
秋の雨ものうき顔にかかるなり
(加藤暁台)
歩きいる鳩降りかくす秋の雨
(長谷川かな女)
家づとに蕎麦粉忘れじ秋の雨
(渡辺水巴)
飲食を断ち経を読む秋の雨
(福田蓼汀)
牛の子が旅に立也秋の雨
(小林一茶)
同じ宿にゐて部屋遠し秋の雨
(五十嵐播水)
思ふこと茅舎たかしや秋の雨
(高野素十)
かゞしから苗一すぢや秋の雨
(高井几菫)
かさねつつ浴泉ひとり秋の雨
(皆吉爽雨)
笠のなき灯に飯くふや秋の雨
(金尾梅の門)
傘一つに寄る三人や秋の雨
(原石鼎)
合羽着て下女も下男も秋の雨
(鈴木花蓑)
蚊帳やめて妻子明るし秋の雨
(大谷碧雲居)
着ずなりし甚平二枚秋の雨
(皆吉爽雨)
けものらは看とられず逝く秋の雨
(堀口星眠)
子供等も重荷を負ふて秋の雨
(高浜虚子)
コーヒー店永遠に在り秋の雨
(永田耕衣)
山陰のじやじやじやじや雨や秋の雨
(京極杞陽)
芝居見る後侘びしや秋の雨
(炭太祇)
出棺に社友つきそひ秋の雨
(滝井孝作)
祖師堂に昼の灯影や秋の雨
(夏目漱石)
篁に来鳴く千鳥や秋の雨
(西山泊雲)
ただ眠き法会づかれや秋の雨
(河野静雲)
たのめ来し折田泊りや秋の雨
(前田普羅)
旅すがら句碑訪ふ秋の雨にぬれ
(高木晴子)
なりはひに釣する人や秋の雨
(高橋淡路女)
野ざらしを見て通りけり秋の雨
(加舎白雄)
ひと飛びの長きすずめや秋の雨
(永田耕衣)
ひねもすや御濠に灑ぐ秋の雨
(内田百間)
踏切の燈にあつまれる秋の雨
(山口誓子)
ふるさとのむかしながらの秋の雨
(京極杞陽)
噴水のひとり働き秋の雨
(高澤良一)
亡妻の琴撫して見る秋の雨
(寺田寅彦)
まつすぐに松の空なる秋の雨
(加藤楸邨)
屋根越しに見る藪の穂や秋の雨
(西山泊雲)
やまざとの瀬にそふ旅路秋の雨
(飯田蛇笏)
よらで過ぐ地獄もありぬ秋の雨
(五十嵐播水)
老犬の上目づかひの秋の雨
(行方克巳)
【関連季語・子季語】
秋雨 秋霖
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