甘 酒
【鑑 賞】 甘酒や同じ夏なる心太
大正時代から昭和後期にかけての俳人・尾崎迷堂(おざきめいどう)の俳句作品。
甘酒と心太の組合せに面白味が感じられる句。
以下、季語「甘酒」の解説です。
【表 記】
(漢字) 甘酒
(ひらがな) あまざけ
(ローマ字) amazake
【季 節】
夏
【分 類】
人事
【意味・説明】
甘酒は、江戸時代には暑気を払うとして夏に好んで飲まれていて、夏の風物詩を代表するものでした。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
秋の蝶甘酒糀ほの白し
(石田波郷)
甘酒がバケツに二拝初天神
(辻桃子)
甘酒にいま存命の一本箸
(伊丹三樹彦)
甘酒に小雪散り込む椿の宮
(伊丹三樹彦)
甘酒に箸いつぽんの妙を添ふ
(上田五千石)
甘酒の甘きをにくむ我下戸ぞ
(正岡子規)
甘酒の薄かりし葛黄葉かな
(清崎敏郎)
甘酒の釜のひかりや夜の土用
(久保田万太郎)
甘酒の老舗はくらし歳の市
(水原秋桜子)
甘酒のすする間に冷え世のいびつ
(岸田稚魚)
甘酒の箸は一本もがり笛
(阿波野青畝)
甘酒の湯気のちよろ火よお滅灯
(古沢太穂)
甘酒はあまきや一木濃き紅葉
(山口青邨)
甘酒も飴湯も同じ樹陰かな
(正岡子規)
甘酒や熱きを吹きて暫しあり
(尾崎迷堂)
甘酒や一樹の蔭の心太
(松根東洋城)
甘酒や土手からのぞく長命寺
(川端茅舎)
甘酒を冷ますに遠目効ききたる
(上田五千石)
甘酒を上燗神の落葉焚き
(平畑静塔)
甘酒をむかし夕の淀屋橋
(松瀬青々)
欝々と迫る芽杉に甘酒飲む
(山口青邨)
乳母の顔浮ぶ祭の甘酒飲む
(伊丹三樹彦)
かまくらに給ぶあつあつの甘酒
(石川桂郎)
神田より甘酒とどく祭かな
(水原秋桜子)
しぐるゝや甘酒ひさぐ寺の門
(寺田寅彦)
十一や甘酒のこる舌の熱
(古舘曹人)
新涼や生姜すり込む濃甘酒
(日野草城)
接待の甘酒どんぐり落つる宮
(山口青邨)
その男恋はあらじ甘酒を呑むこと七碗
(尾崎紅葉)
妻との永い暮らし甘酒を吹き窪ませ
(伊丹三樹彦)
土瓶さげて甘酒踊るかうぢのや
(中勘助)
二杯目の甘酒あつき霜夜かな
(日野草城)
雛飾る座の甘酒に掌をぬくめ
(永井龍男)
不完全燃焼して甘酒呷る
(櫂未知子)
吹きさます甘酒の湯気や朝の萩
(日野草城)
松風の甘酒を吹く出茶屋哉
(正岡子規)
松風や甘酒釜を吹きさまさず
(野村喜舟)
【関連季語・子季語】
一夜酒 甘酒売
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