晩 春
【鑑 賞】 晩春の庭に咲く花終る花
昭和前期から令和初期にかけての俳人・稲畑汀子(いなはたていこ)の俳句作品。
そろそろ季節が変わる頃の雰囲気が感じられる句。
以下、季語「晩春」の解説です。
【表 記】
(漢字) 晩春
(ひらがな) ばんしゅん
(ローマ字) banshun
【季 節】
春
【分 類】
時候
【意味・説明】
晩春とは「春の終わり」「春の末」を意味しますが、二十四節気(にじゅうしせっき)の清明から立夏の前日までをいうこともあります。
また、旧暦三月の異称として用いられます。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
延年の舞終るこれにて春終る
(細見綾子)
かくしマリア晩春雨に納め絵馬
(古沢太穂)
鴉何処までも晩春の茜の中
(山口誓子)
疲れ働く晩春罠のあるごとし
(佐藤鬼房)
楡と見しより晩春の景とおもふ
(能村登四郎)
晩春の一枚の地に独楽立てり
(橋閒石)
晩春の花粉を浴びて女眠る
(和田悟朗)
晩春の髪は切口より炎える
(柿本多映)
晩春の午後の静臥の雲多き
(山口誓子)
晩春の湖上を歩む人ありき
(飯島晴子)
晩春の小蝶もよらず絣織る
(橋閒石)
晩春のコンクリートよりボールト立つ
(加倉井秋を)
晩春の嵯峨野めぐりも句碑ゆかり
(豊田都峰)
晩春の瀬々のしろきをあはれとす
(山口誓子)
晩春の胎児の眠り瓶の中
(有馬朗人)
晩春の地震や志功版画展
(栗林千津)
晩春のとろりと海や母郷見ゆ
(有働享)
晩春の籬に匐はせしゴムホース
(加倉井秋を)
晩春の山の腰ゆく胸騒ぎ
(佐藤鬼房)
晩春のわが眠る場所子のかたはら
(細見綾子)
晩春二人乱反射する八郎潟
(福富健男)
晩春や揚もの種の鱚の膚
(石塚友二)
晩春や旅の男は着崩れがち
(楠本憲吉)
晩春や丸太を焼いて杭としぬ
(加倉井秋を)
晩春や見えしところに富士見えず
(瀧春一)
晩春を吾が白き足袋汽車に乗る
(細見綾子)
父母在らぬ晩春の一通行人
(永田耕衣)
ユトリロ風晩春ねむい港町
(佐藤鬼房)
予報より早く降る晩春の雨
(稲畑汀子)
吾ありて人人ありてわが晩春
(栗林千津)
【関連季語・子季語】
行春 暮春 春尽く
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