春の闇
【鑑 賞】 人の家に廊下探しぬ春の闇
明治末期から昭和後期にかけての俳人・長谷川かな女(はせがわかなじょ)の俳句作品。
深い暗さに包まれた春の夜の雰囲気が感じられる句。
以下、季語「春の闇」の解説です。
【表 記】
(漢字) 春の闇
(ひらがな) はるのやみ
(ローマ字) harunoyami
【季 節】
春
【分 類】
天文
【意味・説明】
月のない春の夜の闇を意味する季語です。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
大壁に春の闇垂れ三世佛
(古舘曹人)
火事遠し春の闇をばほとそめて
(五十嵐播水)
火事止んで水田をとざす春の闇
(相馬遷子)
帰るさのゆびきりげんまん春の闇
(上田日差子)
救世いまだ観音春の闇にあり
(橋本榮治)
業苦たゞ汗して堪ふる春の闇
(相馬遷子)
こころ蓋して春の闇全しや
(上田五千石)
今生の熱きおん手や外に春闇
(文挟夫佐恵)
佐渡どこも海の碧さの春の闇
(上村占魚)
胎動や目覚めてひろき春の闇
(仙田洋子)
茶を捨てに開けし障子や春の闇
(阿部みどり女)
ドンキホテ春の闇より出づべくや
(山口青邨)
何か居り何も居らざり春の闇
(富安風生)
寝返れば秒音うまる春の闇
(楠本憲吉)
猫跳んでまだらになりし春の闇
(柿本多映)
春の闇阿蘇の火柱夜もすがら
(吉武月二郎)
春の闇うしろの顔が笑ひ出す
(平井照敏)
春の闇幼きおそれふと復る
(中村草田男)
春の闇といふくらがりのありにけり
(岸田稚魚)
春の闇無銘の金の位牌見ゆ
(香西照雄)
春の闇よりつぎつぎに濤頭
(清崎敏郎)
はや二日昔の雨や春の闇
(小西来山)
人目なき石ひとつ濡れ春の闇
(鷲谷七菜子)
灯をともす指の間の春の闇
(高浜虚子)
めつむりてひらきておなじ春の闇
(森澄雄)
藻の匂ひ池を上れり春の闇
(長谷川かな女)
ものゝ芽を赤しと思ふ春の闇
(三橋鷹女)
山の端のありしあたりも春の闇
(八木林之介)
世に古りし市松覚めゐる春の闇
(鷲谷七菜子)
利休忌の闇つらぬきて春の瀧
(飯田龍太)
脇甘き鳥の音あり春の闇
(三橋敏雄)
をみなとはかゝるものかも春の闇
(日野草城)
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