日 傘
【鑑 賞】 夕立に日傘さしたる女かな
明治時代の俳人・歌人である正岡子規(まさおかしき)の俳句作品。
急な雨にとまどう雰囲気が感じられる句。
以下、季語「日傘」の解説です。
【表 記】
(漢字) 日傘
(ひらがな) ひがさ
(ローマ字) higasa
【季 節】
夏
【分 類】
人事
【意味・説明】
日本では、大正から昭和初期にかけて洋風の文化が広まった時期に、日傘も流行しました。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
朝ぐもり海岸日傘ひとつ開く
(相生垣瓜人)
居てゝかと格子を覗く日傘かな
(高田蝶衣)
妹に買ううるしぐろなる日傘
(飯田蛇笏)
岩にのぼりてたゝみし日傘かざしけり
(長谷川かな女)
産み月の日傘を何時も手放さず
(右城暮石)
億劫や妻の日傘を讃へるは
(草間時彦)
女あり岩頭に佇ち日傘濃し
(高浜年尾)
垣の上を日傘が通る日となりぬ
(阿部みどり女)
風あまり強くて日傘たゝみもし
(高浜虚子)
借りてさす日傘は派手や豆の花
(中村汀女)
きのこ雲へ熱いクルスの日傘ショウ
(八木三日女)
京人の言葉やさしき日傘かな
(高橋淡路女)
けふのことけふに終らぬ日傘捲く
(上田五千石)
河骨やしんと日傘を透す日に
(中村汀女)
此日傘あづけ申すぞけふ一日
(尾崎紅葉)
子を抱ける男にかざす日傘かな
(野村泊月)
漣のさみしくなりし日傘かな
(岡本眸)
さしつれて若紫の日傘かな
(内藤鳴雪)
しだれ桜日傘の中にあるごとし
(阿部みどり女)
すぐそこの栗山にさへ日傘さし
(山田弘子)
砂山に泳がぬ妹の日傘見ゆ
(日野草城)
たゝまれて日傘も草に憩ふかな
(阿部みどり女)
つぼめある日傘はみ出し臙脂濃し
(篠原梵)
二三本京の日傘を土産にもと
(阿部みどり女)
ぬけうらを抜けうらをゆく日傘かな
(久保田万太郎)
涅槃会や何処の内儀かもふ日傘
(井上井月)
話し来る一つ日傘に出つ入りつ
(高浜虚子)
日傘さし荷蘭陀こちを向きにけり
(芥川龍之介)
日傘さして草に坐りて空忘れ
(阿部みどり女)
日傘さす音のパチンと空へ逃ぐ
(高浜年尾)
日傘さすとき突堤をおもひ出す
(岡本眸)
日傘して琉球人の妻ならん
(寺田寅彦)
ひとり身の日傘廻せば遠くに森
(菖蒲あや)
ひらきたる日傘の陰に這入りけり
(後藤夜半)
墓地に逢ふ日傘の誰も若からず
(岡本眸)
やすみ立つ太夫に日傘静まれり
(高浜年尾)
好く化粧ひ好く着こなして日傘さし
(高浜虚子)
わが影とし開く小さき日傘かな
(長谷川かな女)
われに貸す女の日傘いづれのおひと
(山口青邨)
吾を送り戻る日傘の妻あらん
(波多野爽波)
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