一匹の蜩

 

【鑑 賞】蜩や暗しと思ふ厨ごと

昭和中期から平成中期にかけての俳人・中村汀女(なかむらていじょ)の作品。

蜩が鳴いている夕方の情景がひしひしと伝わってくる句。

 

スポンサーリンク

 

 

以下、季語「蜩」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 蜩

(ひらがな) ひぐらし

(ローマ字) higurashi

 


季 節


 


【分 類】


動物

 


【意味・説明】


蜩は蝉の一種で、その鳴き声から「カナカナ」とも呼ばれます。


“Higurashi” is a type of cicada, and it is also called “kanakana” because of the sound it makes.

スポンサーリンク

 


【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

曉の蜩や覚め又寝落ち
(松根東洋城)

暁の蜩四方に起りけり
(原石鼎)

あしたあるゆえにひぐらしゆうべあり
(荻原井泉水)

あな幽かひぐらし鳴けり滝の空
(水原秋桜子)

一本の木を森といふ蜩鳴き
(山口青邨)

奥の院見えて蜩十八町
(正岡子規)

温泉の宿や蜩鳴きて飯となる
(高浜虚子)

今日も晴るる朝蜩の清し韻
(内藤吐天)

けりけりと深山ひぐらし原爆忌
(秋元不死男)

子を負うてひぐらしの土くらくなる
(森澄雄)

さうろうとして水をさがすや蜩に
(種田山頭火)

さんさん蜩女の写真預かれば
(石田波郷)

山荘の夕蜩に包まるる
(稲畑汀子)

戦前派たり蜩に目つむれば
(岸風三楼)

たちまちに蜩の声揃ふなり
(中村汀女)

遠くなる蜩を聴く松の瘤
(田川飛旅子)

突として蜩の鳴き出でたりな
(高浜虚子)

庭石やいま微に入りし遠ひぐらし
(桂信子)

ひぐらしが下界に鳴けり皇子のため
(山口誓子)

蜩が哭いて百人怠惰なり
(萩原麦草)

蜩といふ断裂を聴きゐたり
(平井照敏)

ひぐらしと電気鋸声悲し
(山口誓子)

ひぐらしに樹々の残照ながかりき
(桂信子)

蜩に鳴きねばられて夕日の樹
(高澤良一)

蜩に覗いてはひる山の茶屋
(野村泊月)

蜩にまだ見送れるお僧かな
(野村泊月)

ひぐらしに無明の星をむかへけり
(飯田蛇笏)

蜩のあとの風音他郷なり
(菅裸馬)

蜩のいまは雪積む地の奥に
(平井照敏)

蜩のつぎ~に鳴き起りけり
(五十嵐播水)

蜩の途方に暮るるこゑと聞く
(高澤良一)

蜩の啼きたかまりてかたみなる
(高浜年尾)

蜩の啼きたる川は凍りけり
(平井照敏)

蜩の鳴くみちのくの石の貌
(斉藤夏風)

ひぐらしの幹のひびきの悲願かな
(飯田龍太)

ひぐらしのやむや浅黄に日の暮れて
(原石鼎)

蜩の与謝蕪村の匂ひかな
(平井照敏)

ひぐらしやあちこち灯る山がゝり
(日野草城)

蜩や浦人知らぬ崖崩れ
(河東碧梧桐)

蜩や終りに近く読み残し
(鈴木花蓑)

蜩や今日もをはらぬ山仕事
(原石鼎)

蜩や何にもしみる夕日影
(野村喜舟)

蜩や旅籠もすなる一軒家
(正岡子規)

蜩や庇に余る黒檜山
(羽部洞然)

蜩や灯のうつくしき上野行
(加藤楸邨)

蜩や風呂わき来れば人にすすむ
(横光利一)

蜩や山の井汲みに杉の道
(西山泊雲)

蜩や夕日さし入るガラス窓
(会津八一)

蜩や夕日の坐敷十の影
(正岡子規)

ひぐらしを聴かである日は阿修羅かな
(加藤秋邨)

 


【関連季語・子季語】


かなかな

 


【他の季語を探す】


春の季語

夏の季語

秋の季語

冬の季語

新年の季語

五十音で探す

 

スポンサーリンク