蚊
【鑑 賞】 ひるの蚊の顔に鳴り行広間かな
江戸時代中期の俳人・炭太祇(たんたいぎ)の俳句作品。
顔にまとわりつく蚊のうっとおしさが強く感じられる句。
以下、季語「蚊」の解説です。
【表 記】
(漢字) 蚊
(ひらがな) か
(ローマ字) ka
【季 節】
夏
【分 類】
動物
【意味・説明】
俳句において、「蚊」は「孑孑(ぼうふら)」とともに夏の季語とされます。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
あとしざる蚊一匹や蚊遣香
(河野静雲)
あまた蚊の血にふくれ居る座禅哉
(炭太祇)
ありたけの蚊をふるひ出す芒哉
(小林一茶)
いつぴきの蚊の執念を憎みけり
(岸風三楼)
いまだ天下を取らず蚤と蚊に病みし
(正岡子規)
うき人に蚊の口見せる腕かな
(黒柳召波)
卯の花や手で追ふ程の蚊のゆふべ
(横井也有)
うは風に蚊の流れゆく野河哉
(与謝蕪村)
かくし子の父や蚊の声来り去る
(西東三鬼)
寒山か拾得か蚊に螫されしは
(夏目漱石)
くるぶしの上より刺せる秩父の蚊
(高澤良一)
心なく寫経の肱を刺す蚊かな
(会津八一)
事よせて蚊屋へさし出す腕かな
(炭太祇)
こんな蚊が名恵上人を螫しにけむ
(阿波野青畝)
仕付糸袖に忘るる蚊の名残
(石川桂郎)
しなのぢや雪が消れば蚊がさはぐ
(小林一茶)
じやがいもの花に朝の蚊沈みゆく
(阿部みどり女)
すさまじく蚊がなく夜の痩せたからだが一つ
(尾崎放哉)
ただ蒼し蚊の目無数の歳月は
(佐藤鬼房)
七夕の竹伐れば蚊が夫へゆく
(殿村莵絲子)
つり鐘の中よりわんと出る蚊哉
(小林一茶)
どこの蚊が最も痛き墓詣
(高浜虚子)
年寄と見るや鳴蚊も耳の際
(小林一茶)
夏の月蚊を疵にして五百両
(榎本其角)
のこる蚊のひとこゑ過ぎし誕生日
(秋元不死男)
一ッ蚊のだまつてしくり~哉
(小林一茶)
ひとりで蚊にくはれてゐる
(種田山頭火)
ふところに蚊を吹き入れて門の月
(会津八一)
古井戸や蚊に飛ぶ魚の音闇し
(与謝蕪村)
古里や蚊に匂ひける栢のから
(井原西鶴)
ぺっちゃんこことし始めて摶たれし蚊
(高澤良一)
むかし蠅追ひし剣我は蚊を撃つの槌
(尾崎紅葉)
むらの蚊の大寄合や軒の月
(小林一茶)
もゆる音が好きで蚊をやくといふ女
(松瀬青々)
山の蚊の縞あきらかや噺
(芝不器男)
山の蚊は石蕗に止まりて色もなし
(阿部みどり女)
夕空や蚊が鳴出してうつくしき
(小林一茶)
宵越のとふふ明りや蚊のさはぐ
(小林一茶)
わが宿は蚊の小さきを馳走也
(松尾芭蕉)
われ在りと思うてをれば厠の蚊
(辻田克巳)
【関連季語・子季語】
蚊帳 蚊遣
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