列をつくって飛ぶ雁と月

 

【鑑 賞】来る雁にはかなきことを聞夜哉

江戸時代中期の俳人・高井几董(たかいきとう)の作品。

雁の声が聞こえる静かな秋の夜の雰囲気に満ちた句。

 

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以下、季語「雁」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 雁

(ひらがな) かり

(ローマ字) kari

 


季 節


 


【分 類】


動物

 


【意味・説明】


日本では、近代以前に雁は食用とされていました。

雁は列をつくって飛ぶ習性があり、この列を雁行(がんこう)といいます。


In Japan, wild geese were edible before modern times.

Wild geese have the habit of flying in a line, and this line is called gankou.

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

浅草の雨夜明りや雁の棹
(芥川龍之介)

あさぢふや人はくつさめ雁は鳴
(小林一茶)

朝の雁背高き夫が仰ぐなり
(及川貞)

あら波や或は低き雁の列
(原石鼎)

いくつらも雁過ぐる夜となりにけり
(松岡青蘿)

いざよひや今あそこにて見ゆる雁
(加賀千代女)

命なり籾をとゞむる雁の喉
(松瀬青々)

埋もれて砂丘によべの雁のこゑ
(百合山羽公)

うら声といふにもあらで雁の声
(上島鬼貫)

汽車道に低く雁飛ぶ月夜哉
(正岡子規)

北にむく雁や迎ひに出でる声
(立花北枝)

昨日今日飛騨とぶ鳥は雁ならし
(前田普羅)

きのふ來てけふ來てあすや雁いくつ
(正岡子規)

くちびるをむすぶや暗き雁の列
(栗林千津)

傾城に鳴くは故郷の雁ならん
(夏目漱石)

げつそりと雁はへりけりよしづ茶屋
(小林一茶)

玄海の濤のくらさや雁叫ぶ
(杉田久女)

子等やいま雁の夜空の星の中
(西島麦南)

淋しさや雁も渡らぬ夕月夜
(正岡子規)

しくるゝや腰湯ぬるみて雁の声
(正岡子規)

庄屋殿の提灯遠し雁の聲
(正岡子規)

書に倦みて饅頭焼けば雁の声
(正岡子規)

炭とりをひきよせてきく雁のこゑ
(金尾梅の門)

たそがれて高原の雁しづみ去る
(飯田蛇笏)

ただ一羽来る夜ありけり月の雁
(夏目漱石)

旅人の雁をかぞへて日をかぞふ
(山口青邨)

中天に雁生きものの声を出す
(桂信子)

ちるまでを雁にも見せてむめの花
(内藤丈草)

月の出や皆首立てゝ小田の雁
(正岡子規)

つらつらと雁並びたる冬田かな
(正岡子規)

手燭して見る湖暗し雨の雁
(野村泊月)

どぜうやよ子供芝居よ雁の秋
(久保田万太郎)

戸の口にすりつぱ赤し雁の秋
(原石鼎)

流れ木に漂ふ雁ときくかなし
(野村泊月)

なき友を算へて立か小田の雁
(松岡青蘿)

投げ出したやうに山から雁の竿
(正岡子規)

寝て仰ぐ星天雁の声過ぐる
(相馬遷子)

はからずもこの朝焼の雁のこゑ
(加藤秋邨)

放ちたる一語が雁と鳴きながら
(栗林千津)

低く飛ぶ雁ありさては水近し
(黒柳召波)

日の暮や穂にあく雁の友狂ひ
(立花北枝)

拍子ぬく雁や堅田を直通り
(横井也有)

屏風立つ旅雁の屏風その一つ
(後藤夜半)

振売の雁あはれなりゑびす講
(松尾芭蕉)

待ちかねて雁の下りたる刈田かな
(小林一茶)

三日月の下をわたるや雁の聲
(正岡子規)

みだるるや箙のそらの雪の雁
(飯田蛇笏)

みづうみの長き夕日に雁きたる
(百合山羽公)

みづうみを渡れる雁のあきらかに
(岸風三楼)

夫婦雁咄して行ぞあれ行ぞ
(小林一茶)

 


【関連季語・子季語】


かりがね  初雁  雁風呂

 


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