香 水
【鑑 賞】 香水に心驕れる女かな
大正前期から昭和後期にかけての俳人・阿部みどり女(あべみどりじょ)の俳句作品。
女性の心境が見事に表現されている句。
以下、季語「香水」の解説です。
【表 記】
(漢字) 香水
(ひらがな) こうすい
(ローマ字) kosui
【季 節】
夏
【分 類】
人事
【意味・説明】
香水は、そもそもは宗教的な用途や薬用として使われていましたが、やがて嗜みや香りを楽しむような使い方がされるようになりました。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
青葡萄香水消ゆる扉のほとり
(石橋秀野)
あねいもと性異なれば香水も
(吉屋信子)
一隅に香水立ちてかをるなり
(山口誓子)
一滴もなき香水罎の強き匂ひ
(内藤吐天)
おみくじを受けて香水匂はせて
(吉屋信子)
旧藩邸木の香水の香夏近し
(柴田白葉女)
唇に香水の香のうつりをり
(仙田洋子)
香水買ふ眉ひそませて美しく
(成瀬正俊)
香水に縁なき暮し一生涯
(細見綾子)
香水に孤高の香りあらまほし
(高浜虚子)
香水のいまも背高き叔母に会ふ
(文挟夫佐恵)
香水のうしろにあるを感じをり
(岸風三楼)
香水の一滴づつにかくも減る
(山口波津女)
香水の香ぞ鉄壁をなせりける
(中村草田男)
香水の香の内側に安眠す
(桂信子)
香水の香のそこはかとなき嘆き
(久保田万太郎)
香水の香を焼跡にのこしけり
(石田波郷)
香水の坂にかかりて匂ひ来し
(中村汀女)
香水の正札瓶を透きとほり
(星野立子)
香水のその人なればふさはしく
(高浜年尾)
香水の名に托されし心とも
(山田弘子)
香水の苦きを愛す人ぞかし
(山口青邨)
香水のにほふつめたき人の顔
(柴田白葉女)
香水の瓶にさしけり黄なる菊
(寺田寅彦)
香水の壜の愁を愛しけり
(後藤夜半)
香水もネクタイも荷を重くせず
(稲垣きくの)
香水やお臍かあゆき天女カブサラ
(長谷川かな女)
香水や昨日今日より狂気なり
(平畑静塔)
香水や国宝仏の閉ざさるる
(石川桂郎)
香水を知つてをるなり去りにけり
(石原八束)
香水やすさまじき汽車風の中
(石田波郷)
香水やその人既に亡しと聞く
(高浜年尾)
香水や時折キツとなる婦人
(京極杞陽)
香水や母と故郷を異なれり
(寺山修司)
香水やまぬがれがたく老けたまひ
(後藤夜半)
香水や眼をほそうして古男
(飯田蛇笏)
香水や闇の試写室誰やらん
(吉屋信子)
香水や病むと聞きしもはれやかに
(高濱年尾)
香水や腋も隠さぬをんなの世
(石川桂郎)
香水やをりをりひびく仏蘭西語
(清崎敏郎)
香水を借りもし旅の親しさに
(稲畑汀子)
香水をつけぬ誰にも逢はぬ日も
(稲畑汀子)
死てふ語と香水の香の行きずりに
(大野林火)
須弥山説香水海の鯨かな
(尾崎迷堂)
たいくつな胸の香水匂ふとき
(高木晴子)
小さき重さの巴里の香水うけにけり
(及川貞)
白衣とて胸に少しの香水を
(坊城中子)
巴里の香水箪笥に仕舞ふ薄暑かな
(及川貞)
一人のため永久欠番たる香水
(櫂未知子)
蛍火を横切る香水はばからず
(行方克巳)
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