緑 蔭
【鑑 賞】 白雲を出る日仰ぎつ緑蔭に
昭和時代の俳人・中村草田男(なかむらくさたお)の俳句作品。
夏空に浮かぶ雲が目に浮かんでくるような句。
以下、季語「緑蔭」の解説です。
【表 記】
(漢字) 緑蔭
(ひらがな) りょくいん
(ローマ字) ryokuin
【季 節】
夏
【分 類】
植物
【意味・説明】
緑蔭とは、青葉や若葉が茂った木蔭のことをいいます。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
移動せむと緑蔭はまたうごめきぬ
(永田耕衣)
回想は遠き緑蔭の家鴨さへ
(香西照雄)
神さびて大緑蔭に宮居あり
(星野立子)
コートの線の石灰飛び来緑蔭に
(田川飛旅子)
この緑蔭みなが楽しむ木ですから
(岸田稚魚)
テニスライン侵さぬ緑蔭恋も可憐
(香西照雄)
夏蜜柑むき緑陰は二人のもの
(富安風生)
二十余樹大緑蔭を成せりける
(星野立子)
庭にして緑蔭なせば朝な立つ
(皆吉爽雨)
八幡様の緑陰貰ひ屋台建つ
(高澤良一)
母は死ねりと緑蔭に来て己に告ぐ
(有働亨)
晩学や道緑蔭で果つるかに
(香西照雄)
人乗れば緑蔭の馬尾を振り出づ
(阿部みどり女)
ぶつ切の鰡緑蔭へ海女運ぶ
(羽部洞然)
古庭の緑蔭そこにこゝにかな
(高浜年尾)
幹高く大緑蔭を支へたり
(松本たかし)
みちの辺の緑蔭にして小さけれ
(高浜年尾)
物語めき緑蔭に馬車とまる
(成瀬正俊)
湯あみせし如く句碑あり緑蔭に
(星野立子)
緑蔭に蟻殺す童を見て憩ふ
(西島麦南)
緑蔭におく冬帽の汗のあと
(細見綾子)
緑蔭に眼帯の子をけふも見し
(西島麦南)
緑蔭に木の股ありて憩ふべく
(高浜年尾)
緑蔭に黒猫の目のかつと金
(川端茅舎)
緑蔭に子とをり登つてみせたくなりぬ
(篠原梵)
緑蔭に三人の老婆わらへりき
(西東三鬼)
緑蔭に徹夜行軍の身を倒す
(相馬遷子)
緑蔭に盲目の感澄しけり
(長谷川かな女)
緑蔭に読みくたびれし指栞
(辻田克巳)
緑蔭にルソーの猿を呼んでをり
(文挟夫佐恵)
緑蔭にゐるがその子の母らしく
(上村占魚)
緑蔭の赤子の欠伸母にうつりぬ
(大野林火)
緑蔭の濃きを選りては揚羽過ぐ
(桂信子)
緑蔭の言葉や熱せずあたたかく
(中村草田男)
緑蔭の人の目濁り牛角力
(殿村莵絲子)
緑蔭のわが入るときに動くなり
(永田耕衣)
緑蔭はなけれど遠き樹海あり
(後藤夜半)
緑陰もまたおちつかず揚羽蝶
(桂信子)
緑蔭や紙屑籠と紙屑と
(波多野爽波)
緑蔭やなほ卓うつすべく広く
(中村汀女)
緑蔭や白鳥遠く去りてあり
(鈴木花蓑)
緑蔭や眼鏡光りてこちを見る
(高浜虚子)
緑蔭やラジオながらも琴もれて
(石田波郷)
緑蔭を襖のうしろにも感ず
(富安風生)
【関連季語・子季語】
翠蔭
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