早咲きの桜

 冴え返る

 

【鑑 賞】影よりも風の日向の冴返る

昭和前期から令和初期にかけての俳人・稲畑汀子(いなはたていこ)の作品。

まだ春にはなりきっていない頃の寒さの印象に満ちている句。

 

スポンサーリンク

 

 

以下、季語「冴え返る」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 冴え返る

(ひらがな) さえかえる

(ローマ字) saekaeru

 


季 節


 


【分 類】


時候

 


【意味・説明】


「冴え返る」は、春になって暖かくなり始めた頃に、冬の冴え冴えとした寒さが戻った感じを表現する季語です。


“Saekaeru” is a season word expressing the feeling that the coldness that went cold in winter returned again by the time it began to become warmer in the spring.

スポンサーリンク

 


【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

青松が森の稜線冴返る
(石田波郷)

あざけりを浴びるごと昼冴え返る
(成田千空)

あまぐもはしろし詩文に冴返る
(飯田蛇笏)

行火守る木乃伊の婆々に冴え返る
(河野静雲)

海遠き国の嶺々冴え返る
(原石鼎)

衰へしいのちを張れば冴返る
(日野草城)

同じ道黙し戻れば冴え返る
(高澤良一)

枯枝のさきそろひゐて冴え返る
(室生犀星)

君行かばわれとどまらば冴返る
(正岡子規)

雲に鳶富士たかき日の冴返る
(飯田蛇笏)

子のためにいのち惜しめば冴えかへる
(柴田白葉女)

冴え返り冴え返りつゝ春央ば
(西山泊雲)

冴返りつゝ雨降る日風吹く日
(星野立子)

冴返り礼儀全き老教師
(林翔)

冴えかへる影ひとすぢの絲野蒜
(篠田悌二郎)

冴え返る川上に水なかりけり
(村上鬼城)

冴え返る三十三間堂の端
(岸田稚魚)

冴え返る空を歩いてきたりけり
(平井照敏)

冴えかへるそれも覚悟のことなれど
(高浜虚子)

冴えかへるとて美しき仏顔
(石原八束)

冴え返るとは蝋涙に人立ちて
(宇佐美魚目)

冴返る野天に石の御百体
(鈴木花蓑)

冴えかへるもののひとつに夜の鼻
(加藤秋邨)

冴返る夜も恋故の通ひ猫
(石塚友二)

凍返る夜をあざけらる顔白し
(石原八束)

猿山より下のけものの冴え返る
(金田咲子)

ただ一日ゆるす懶惰に冴返る
(林翔)

たちまちに夜は冴返る国さかひ
(飯田蛇笏)

乳呑子のよくねる今夜冴返る
(滝井孝作)

椿などくたくたにして冴返る
(相生垣瓜人)

庭木々の泥洗ひけり冴え返る
(大須賀乙字)

まことの死かなたにし夜々冴返る
(石塚友二)

三日月はそるぞ寒はさえかへる
(小林一茶)

ももいろの一生傷も冴返る
(辻田克巳)

瑠璃色にして冴返る御所の空
(阿波野青畝)

 


【関連季語・子季語】


 

 


【他の季語を探す】


春の季語

夏の季語

秋の季語

冬の季語

新年の季語

五十音で探す

 

スポンサーリンク