鶺 鴒
【鑑 賞】 せきれいに夕あかりして山泉
明治中期から昭和中期にかけての俳人・飯田蛇笏(いいだだこつ)の俳句作品。
秋の夕暮れ時の静かな情景が目に浮かんでくる句。
以下、季語「鶺鴒」の解説です。
【表 記】
(漢字) 鶺鴒 鶺䴇
(ひらがな) せきれい
(ローマ字) sekirei
【季 節】
秋
【分 類】
動物
【意味・説明】
鶺鴒はセキレイ科の鳥です。
主に水辺に住み、長い尾を上下に振る習性があるので、その様子に由来した「石叩(いしたたき)」「庭叩(にわたたき)」などの別名があります。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
鶺鴒が掠めし水のみだれのみ
(中村汀女)
鶺鴒がきしひさびさのにはたづみ
(川島彷徨子)
鶺鴒がたたいて見たる南瓜かな
(小林一茶)
鶺鴒去り岩の栄枯はよみがへる
(古舘曹人)
鶺鴒とただちに判る翔び方よ
(高澤良一)
鶺鴒に鳴き応へけり山の鳥
(西山泊雲)
鶺鴒の歩き出て来る菊日和
(松本たかし)
鶺鴒の石あり淵は瀬とひかる
(相馬遷子)
鶺鴒の尾にはねらるる蚯蚓哉
(正岡子規)
鶺鴒の尾を振りきそふ早瀬哉
(尾崎紅葉)
鶺鴒のつと来てとまる筏かな
(高橋淡路女)
鶺鴒のとゞまり難く走りけり
(高浜虚子)
鶺鴒の飛ぶを河とす枯葎
(野村喜舟)
鶺鴒の止れば視線つながりぬ
(稲畑汀子)
鶺鴒の庭歩みしが吾も歩む
(山口青邨)
鶺鴒のひるがへり入る松青し
(水原秋桜子)
鶺鴒の吹分れても遠からず
(阿波野青畝)
鶺鴒のよけて走りし落椿
(三好達治)
鶺鴒は田のうすらひを小走りに
(阿部みどり女)
鶺鴒や岩を凹める尾の力
(正岡子規)
鶺鴒や小松の枝に白き糞
(夏目漱石)
鶺鴒や土打つことを神代より
(野村喜舟)
鶺鴒や水際明りに二三匹
(鈴木花蓑)
せきれいに生れてきしは誰やらん
(中勘助)
せきれいの叩く自炊の土鍋は空ら
(長谷川かな女)
せきれいのとまりて枯るゝ柳かな
(村上鬼城)
せきれいひとりでくるわたしがひとり
(荻原井泉水)
田の闇に鶺鴒鳴けり初手水
(高田蝶衣)
秘境出て鶺鴒の水糸をよる
(古舘曹人)
街にして道をせきれい愛鳥日
(皆吉爽雨)
世の中は鶺鴒の尾のひまもなし
(野澤凡兆)
【関連季語・子季語】
石叩 庭叩
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