秋 思
【鑑 賞】 大暑過ぎすでに秋思に胸満たす
明治後期から昭和末期にかけての俳人・及川貞(おいかわてい)の俳句作品。
まだ訪れぬ秋に対する思いが強く感じられる句。
以下、季語「秋思」の解説です。
【表 記】
(漢字) 秋思
(ひらがな) しゅうし
(ローマ字) shushi
【季 節】
秋
【分 類】
人事
【意味・説明】
秋思とは、秋になって感じたり思ったりをする寂しさを意味する言葉です。
春の場合には「春愁(しゅんじゅう)」といいます。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
俯向ける頭蓋秋思の重さとも
(林翔)
アバドいま秋思のかたち緩徐草
(橋本榮治)
いきなりの一笛秋思断たれけり
(鷲谷七菜子)
海はみどりと聞きて秋思のさだまりぬ
(細見綾子)
永劫の涯に火燃ゆる秋思かな
(野見山朱鳥)
影生れて秋思の相の鳴沙山
(松崎鉄之介)
河童が渕河童も秋思に耽る頃
(高澤良一)
河原石手にとることも一秋思
(高澤良一)
君と我秋思は同じ一目の居
(阿波野青畝)
霧の夜の秋思すなはち恋ごころ
(日野草城)
ことごとく秋思十一面観音
(鷹羽狩行)
琴爪に映る篝火秋思祭
(山田弘子)
古都に聞く砧や秋思こまやかに
(鈴鹿野風呂)
この秋思五合庵よりつききたる
(上田五千石)
酒過ごす秋思のほかに何やある
(上田五千石)
澤水のつめたさ秋思にも似つる
(上村占魚)
塩を置くこんな秋思の入口に
(櫂未知子)
秋思あり触れて素焼の鉢の肌
(鈴木真砂女)
秋思なら電子レンジにかけてある
(櫂未知子)
秋思の目してたたずめる蟷螂かな
(阿波野青畝)
秋思湧く井ほとり旅の汗拭けば
(皆川白陀)
せせり蝶ふえて秋思もつのりけり
(百合山羽公)
善福寺池のベンチの秋思かな
(皆吉司)
たかしの墓たかしの文字の秋思かな
(青木重行)
旅恋へば深む秋思のますほ貝
(山田弘子)
黙つてゐることも秋思に数へたり
(上田日差子)
力杖秋思の杖となりにけり
(鷲谷七菜子)
飛石といへる秋思を並べたる
(後藤比奈夫)
橋を渡る水に魚ゐる秋思かな
(細見綾子)
人憎し秋思の胸に釘うちこむ
(稲垣きくの)
頬杖に深き秋思の観世音
(高橋淡路女)
模様ともつかぬ李朝の壺秋思
(上村占魚)
夕浪の秀の折れ易き秋思かな
(安住敦)
寄りあひてはなれて石の秋思かな
(桂信子)
老愁のその一端の秋思かな
(相生垣瓜人)
ゐざり機秋思のいとま許されず
(上田五千石)
【関連季語・子季語】
秋懐 秋あわれ 秋さびし
秋思祭
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