芒
【鑑 賞】 ひや~と入日の燃ゆる芒かな
大正時代から昭和後期にかけての俳人・金尾梅の門(かなおうめのかど)の俳句作品。
雄大な日暮れの情景が目に浮かんでくる句。
以下、季語「芒」の解説です。
【表 記】
(漢字) 芒
(ひらがな) すすき
(ローマ字) susuki
【季 節】
秋
【分 類】
植物
【意味・説明】
芒(すすき)はイネ科ススキ属の植物で、秋の七草(女郎花、芒、桔梗、撫子、藤袴、葛、萩)の一つです。
尾花(おばな)や振袖草(ふりそでぐさ)と呼ばれることもあります。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
秋すでに芒に触るゝ雲しろく
(岸風三楼)
秋晴の強き芒にふれにけり
(原石鼎)
あくまでも芒の視界なりしかな
(稲畑汀子)
朝風や赤み帯びたる山芒
(阿部みどり女)
いのち澄む思ひや芒一本活け
(村越化石)
うば車に蒲鉾も売る芒かな
(西山泊雲)
売れ残る八百屋の芒後の月
(高橋淡路女)
江戸川や月待宵の芒船
(小林一茶)
お十夜に穂の間にあひし芒かな
(久保田万太郎)
お月様お星様芒ばかりにて
(臼田亜浪)
おのが荷に追はれて淋し芒売
(正岡子規)
折りとりてはらりとおもき芒かな
(飯田蛇笏)
かれ芒人に売れし一つ家
(小林一茶)
川波のこゑを懸けゆく糸芒
(高澤良一)
狐火や風雨の芒はしりゐる
(杉田久女)
ぎらぎらと晩夏の芒手にさはる
(松村蒼石)
くれゆく芒杣負ふ婆のみ日当りて
(桂信子)
梳りみたきをさなき芒の穂
(後藤夜半)
洪水のレールをひたす芒かな
(会津八一)
この道の富士になり行く芒かな
(川東碧梧桐)
さそり座の形に吹いて芒の風
(萩原麦草)
残月に日出づる原の芒かな
(高浜虚子)
不知火の見えぬ芒にうづくまり
(杉田久女)
しろがねのこがねの芒鳴りわたる
(平井照敏)
ずきずきと太陽しづむ芒原
(田川飛旅子)
すこやかな五體を没し芒折る
(阿部みどり女)
たよるとはたよらるゝとは芒かな
(久保田万太郎)
人並や芒もさわぐはゝき星
(小林一茶)
吹からに芒の露のこぼるゝよ
(上島鬼貫)
また道の芒のなかとなりしかな
(久保田万太郎)
まつすぐに道くたびれる芒かな
(野村喜舟)
みちのくの風の冷めたき芒かな
(高橋淡路女)
無月なり芒惜しまず患者たち
(石田波郷)
目さむれば貴船の芒生けてありぬ
(高浜虚子)
山越ゆるいつかひとりの芒原
(水原秋桜子)
山は暮て野は黄昏の芒かな
(与謝蕪村)
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