病 葉
【鑑 賞】 病葉の乾ける早さ地にまろび
昭和前期から令和初期にかけての俳人・稲畑汀子(いなはたていこ)の俳句作品。
病葉の動きが目に浮かび、暑さが伝わってくる句。
以下、季語「病葉」の解説です。
【表 記】
(漢字) 病葉
(ひらがな) わくらば
(ローマ字) wakuraba
【季 節】
夏
【分 類】
植物
【意味・説明】
病葉(わくらば)とは、夏の暑さによって傷んだ葉が緑の色を失って落ちたり、虫に食われるなどして散ったりするもの
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
うたた寝覚むあなた病葉降れるなり
(高澤良一)
巨いなる病葉舞へり人の中
(草間時彦)
北上川は赤川やなぎ病葉舞ひ
(山口青邨)
咲きいそぐ夕顔や病葉もまた
(松村蒼石)
どこまでも桜病葉ふむ道ぞ
(山口青邨)
流れゆく胡桃病葉梅雨の川
(山口青邨)
なき跡に散るわくら葉を見る日哉
(高桑闌更)
にぎわしき日の出に踏みし病葉よ
(萩原麦草)
掃き終へし後のわくら葉は掃かず
(永井龍男)
萬緑に堪えざる病葉と思ふ
(岡本眸)
吹きまろぶ病葉あそぶ檜皮屋根
(阿波野青畝)
山深み拾ふ病葉手にはせる
(鈴鹿野風呂)
夕山の病葉はえぬ一嵐
(中島月笠)
吉野路やさくら病葉降る頃を
(山田弘子)
病葉赤き栃の大樹や巴里祭
(堀口星眠)
病葉ちる寂光ふるき墓ばかり
(村山古郷)
病葉といはれゐる葉の裏衣
(後藤比奈夫)
病葉に絶えぬふすべの煙かな
(阿波野青畝)
わくら葉に人かげ透ぬ須磨簾
(桜井梅室)
病葉に寄り来ては散る渕の魚
(右城暮石)
病葉にわが靴なんぞ鳴りひびく
(大野林火)
わくら葉の落る間宿る太山哉
(松岡青蘿)
病葉の落つや今年も早なかば
(高橋淡路女)
病葉の歯朶にあたりて落ちにけり
(京極紀陽)
病葉の散るとてかへる山家かな
(前田普羅)
わくら葉の梢あやまつりんご哉
(与謝蕪村)
病葉の掃きよする黄の俄かなり
(皆吉爽雨)
病葉のはら~とはら~と散る
(星野立子)
病葉のひとつの音の前後かな
(阿波野青畝)
わくら葉の灯にあらはなるいとひかな
(富田木歩)
病葉のふりつむ径は神馬寮
(百合山羽公)
病葉はからくれなゐに病めりけり
(阿波野青畝)
病葉やあながちの恋紅の照り
(松根東洋城)
病葉や石にも地にも去年のやう
(前田普羅)
病葉や学問に古る白浴衣
(原石鼎)
病葉や妻縦横に鋏使ふ
(加倉井秋を)
わくら葉や天の青さに宿廃れ
(木村蕪城)
病葉やもの載せて秤の針うごく
(加倉井秋を)
病葉を振り落しつゝ椎大樹
(高浜虚子)
わくら葉を指にひろへり長やまひ
(日野草城)
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