暖 か
【鑑 賞】夜明けから雀が鳴いて暖かき
明治末期から昭和中期にかけての俳人・臼田亞浪(うすだあろう)の作品。
季節が変わった喜びがが感じられる句。
以下、季語「暖か」の解説です。
【表 記】
(漢字) 暖か
(ひらがな) あたたか
(ローマ字) atataka
【季 節】
春
【分 類】
時候
【意味・説明】
「暖か」は、春になってからの時候を表現する季語です。
“Atataka” is a season word that expresses the weather after spring.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
暖かき座敷の庭に洗濯す
(正岡子規)
暖かき日なり大事に過ごすべし
(相生垣瓜人)
暖かき日を遊ばんと野に出でし
(高木晴子)
あたたかき闇或ときは涙わく
(松村蒼石)
暖かくなりて言葉もあたたかし
(阿部みどり女)
あたたかな雨が降るなり石蕗の花
(山口青邨)
あたたかなふたりの吾子を分け通る
(中村草田男)
あたゝかな窓に病気の名残かな
(正岡子規)
あたたかにあけがたの雨ふり出でぬ
(篠原梵)
あたたかに亀看経す馬の塚
(角川源義)
暖かに心にたゝみ聞く言葉
(星野立子)
あたたかや絵本見る児のひとりごと
(福田蓼汀)
あたたかや味噌ひとかたけ子に持たせ
(安住敦)
あたたかに指で押しゆく雲ひとつ
(平井照敏)
あたたかや雨の力を洋傘に感ず
(大野林火)
暖かや飴の中から桃太郎
(川端茅舎)
暖かやいぬころほどな雲の影
(内藤吐天)
あたたかや皮ぬぎ捨てし猫柳
(杉田久女)
あたたかや起立助ける妻の肩
(秋元不死男)
暖かや黒き布より鳩生れ
(田川飛旅子)
暖かやこの人の名を忘れゐる
(永井龍男)
暖かや背の子の言葉聞きながし
(中村汀女)
暖かや空のがまぐち知らず持ち
(石川桂郎)
あたたかや日向ぼこりのまたたきの
(中村汀女)
暖かや仏飯につく蝿一つ
(飯田蛇笏)
あたたかや貰ひし種をまだ蒔かず
(百合山羽公)
あたたかをたもつ食籠や衣被
(阿波野青畝)
有難や胴著が生める暖かさ
(高浜虚子)
石蹴りの筋引いてやる暖かさ
(臼田亜浪)
いつしかや手のあたたかく春の雪
(中村汀女)
内よりも外が暖か梅の花
(星野立子)
影を曳く石ころとゐて暖かし
(竹下しづの女)
今日よりの暖かさとはなりにけり
(高浜年尾)
懸命に子が坂のぼる暖かき
(臼田亜浪)
後宮のごとあたたかに麹室
(平井照敏)
ごみごみと降る雪ぞらの暖かさ
(宮沢賢治)
しんがりをよろこぶ家鴨なり暖か
(秋元不死男)
摺鉢に入りてあたたか大砂丘
(石川桂郎)
竹林や暖かき地に力秘め
(阿部みどり女)
つく杖の銀あたたかに蝶蝶かな
(松本たかし)
手袋をとりたての手の暖かく
(星野立子)
どことなく月ありあたたかなる夜なり
(篠原梵)
人間の歯を売つてゐる暖かに
(臼田亞浪)
人ちらほら風あたゝかに松葉関
(正岡子規)
一ひらの雲消えてゆく暖かき
(富田木歩)
日は天にまろくあたたか枇杷の花
(山口青邨)
ふりかゝり来るもの払ひ暖かし
(高木晴子)
ほのぼのと襟あたたかし石蕗も日に
(橋本多佳子)
舞ふ獅子にやさしく噛まれ暖かし
(殿村莵絲子)
休め田に星うつる夜の暖かさ
(尾崎放哉)
【関連季語・子季語】
あたたかし ぬくし
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