風 鈴
【鑑 賞】くろがねの秋の風鈴鳴りにけり
明治中期から昭和中期にかけての俳人・飯田蛇笏(いいだだこつ)の作品。
「風鈴」といわれて誰もが思い浮かべるであろう句。
以下、季語「風鈴」の解説です。
【表 記】
(漢字) 風鈴
(ひらがな) ふうりん
(ローマ字) furin
【季 節】
夏
【分 類】
人事
【意味・説明】
風鈴は、「鉄馬」や「簷馬」と呼ばれることもあります。
Furin is also called “tetsubna” or “emba”.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
秋風に鳴る風鈴は道しるべ
(富安風生)
秋近き風鈴となりねむられぬ
(三橋鷹女)
朝のまの街のしづけさ風鈴売
(富田木歩)
逢へぬ夜の風鈴しげく鳴ることよ
(中村苑子)
天の邪鬼夜半の風鈴玩ぶ
(相生垣瓜人)
あめつちのさびしさ風鈴売通る
(加倉井秋を)
風かほれ風鈴の銘も小倉山
(斯波園女)
仮吊の風鈴しげく鳴りにけり
(中村汀女)
寒中の風鈴が鳴る四温かな
(飯田蛇笏)
くろ~と風鈴鳴りぬ胸のうち
(萩原麦草)
原爆に残りし町に軒風鈴
(松崎鉄之介)
木枯に風鈴鳴らしゐて眠る
(岸田稚魚)
新婚の新居風鈴すでになる
(及川貞)
せはしげに安風鈴の鳴り通し
(富安風生)
禅寺に風鈴の音を期待せず
(山口誓子)
長短や風鈴の声梅雨の音
(百合山羽公)
吊り古りし風鈴に音戻りけり
(岸田稚魚)
鉄壁の心の隙に風鈴鳴る
(加藤楸邨)
時ならぬ時にも硝子風鈴鳴る
(細見綾子)
亡き人の振るよ夜明けの風鈴は
(殿村菟絲子)
夏足袋にアイロン風鈴に耳貸し
(鈴木真砂女)
煮えきらぬ風鈴の音とつぶやけり
(高澤良一)
熱の午後破れ風鈴も押し黙る
(石川桂郎)
軒ふかしこの風鈴を吊りしより
(竹下しづの女)
初茶会風鈴軒に釣りしまま
(平畑静塔)
母の日の風鈴しきり鳴ることよ
(鈴木真砂女)
万緑になじむ風鈴昼も夜も
(飯田蛇笏)
灯ともせば簀の外くらし風鈴売
(富田木歩)
孤り居に風鈴吊れば黍の風
(杉田久女)
病閑に風鈴はあり千種あり
(阿部みどり女)
風鈴があればかなしき時あらん
(細見綾子)
風鈴にうつりて小さき庵かな
(長谷川かな女)
風鈴に大きな月のかゝりけり
(高浜虚子)
風鈴に風のすぐ来る路地暮し
(菖蒲あや)
風鈴にきのふとすぎぬ今日と過ぎ
(阿部みどり女)
風鈴に月見草ありそれでよし
(高木晴子)
風鈴にどこへも行かず暮しけり
(高橋淡路女)
風鈴に慰められてゐるやうな
(清水基吉)
風鈴に鍋釜置きて二階窓
(阿部みどり女)
風鈴の赤き舌ひるがへりけり
(久保田万太郎)
風鈴の垣根涼しく曲りけり
(阿部みどり女)
風鈴の風つよければ吃りけり
(岸風三楼)
風鈴の空は荒星ばかりかな
(芝不器男)
風鈴のつひにかなしき音をつたへ
(久保田万太郎)
風鈴の鳴りまつはるや思ひごと
(高橋淡路女)
風鈴の音が眼帯にひびくのよ
(三橋鷹女)
風鈴のひとり纏へる微涼はも
(相生垣瓜人)
風鈴のもつるるほどに涼しけれ
(中村汀女)
風鈴のよき音に一夜僧を泊む
(宮武寒々)
風鈴の忘れられゐて鳴りにけり
(岸風三楼)
風鈴は鳴りぬ燈籠は廻りけり
(青木月兎)
風鈴は優し機械と流れ作業
(平畑静塔)
風鈴も暮れて了ひぬ暮れ果てぬ
(石塚友二)
風鈴も鳴り難くしてぢりぢりす
(相生垣瓜人)
風鈴や家新しき木の匂ひ
(鈴木花蓑)
風鈴屋老の弱腰たてにけり
(飯田蛇笏)
風鈴屋こゝにまだ居ぬ湯の戻り
(高橋淡路女)
風鈴やさして来りしあふるき日
(久保田万太郎)
風鈴や選句に占めし梯子段
(渡辺水巴)
風鈴や花にはつらき風ながら
(与謝蕪村)
風鈴や一と泣きしたる児の機嫌
(高橋淡路女)
風鈴やひとりに適ふ路地暮し
(菖蒲あや)
風鈴や松の籟に寺存す
(前田普羅)
風鈴や目覚めてけふのくらしあり
(鈴木真砂女)
風鈴や余命とあらば愉しまむ
(鈴木真砂女)
風鈴を作りし人の送り状
(後藤夜半)
風鈴を吊る軒ふかく梅雨ぐもり
(飯田蛇笏)
風鈴をもらひしまゝに吊しけり
(阿部みどり女)
冬の風鈴ただ一息の今年なりし
(中村草田男)
触れてみて江戸風鈴の音色かな
(稲畑汀子)
【関連季語・子季語】
風鐸 簷馬(えんば) 風鈴売
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