水面から飛び立つ雁

雁風呂

 

【鑑 賞】 雁風呂に雨や降る山近く見ゆ

明治前期から昭和前期にかけての小説家・俳人であった佐藤紅緑(さとうこうろく)の作品。

雁風呂の由来の切なさが、雨によって一層増して感じられる句。

 

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以下、季語「雁風呂」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 雁風呂

(ひらがな) がんぶろ

(ローマ字) gamburo

 


季 節


 


【分 類】


人事

 


【意味・説明】


秋に雁は渡って来るときに、木をくわえて飛びます。疲れると海にこれを浮かべて、その上で休むためです。

帰るときには、これを再びくわえて飛んでゆきますが、それまでに死んでしまった数の木が海岸に残ります。

これを集めて、薪にして風呂を焚くのが雁風呂です。


When wild geese come across in autumn, they hold a piece of wood in their mouth and fly.

This is because when they get tired they rest on this floating on the sea.

When they return, they will keep this again, but the same number of trees as the dead goose are left on the coast.

It is a “gamburo” that gathers this, makes firewood and burns a bath.

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

海荒れてこの浜に雁風呂ありそうな
(永野孫柳)

海鳴りてすぐ雁風呂の冷めにけり
(八牧美喜子)

雁風呂にカンテラ灯す廂かな
(吉野左衛門)

雁風呂に客も哀れと和しにけり
(高田蝶衣)

雁風呂にこさ吹く暮や浦の風
(菅原師竹)

雁風呂にぬくもりゐるや念仏者
(松瀬青々)

雁風呂に松の薪(たきぎ)を運びけり
(松瀬青々)

雁風呂の焚口に来る男波かな
(籾山柑子)

雁風呂の焚けさうな木の蒐めあり
(後藤比奈夫)

雁風呂の薪はきえてしまひけり
(中勘助)

雁風呂のもえぬ木をふく涙かな
(高田蝶衣)

雁風呂や蜑がつたへて古き鉦
(庄司瓦全)

雁風呂や雨こぼれ来て潮平ら
(吉武月二郎句)

雁風呂や海荒るゝ日は焚かぬなり
(高浜虚子)

雁風呂や笠に衣ぬぐ旅の僧
(飯田蛇笏)

雁風呂や煙にむせぶ鳥の影
(中勘助)

雁風呂や月を泛べて汐到る
(田中田士英)

雁風呂や湖一枚の寂とあり
(水庭進)

今日も亦よいの雁風呂焚つけし
(原月舟)

長々と雁風呂のこと話しけり
(岡田史乃)

 


【関連季語・子季語】


雁供養  雁帰る

 


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