南 風
【鑑 賞】南風や化粧に洩れし耳の下
大正前期から昭和中期にかけての俳人・日野草城(ひのそうじょう)の作品。
何ともいえない艶めかしさが感じられる句。
以下、季語「南風」の解説です。
【表 記】
(漢字) 南風
(ひらがな) はえ、みなみ、なんぷう
(ローマ字) hae
【季 節】
夏
【分 類】
天文
【意味・説明】
季語の「南風」は「はえ」「みなみ」「なんぷう」として使われます。
The season word “南風” is used as “hae”,”minami”, and “nampu”.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
朝南風に立山近き田打かな
(金尾梅の門)
尼も乗る松前船の南風かな
(飯田蛇笏)
雨はこぶ南風の山吹ちりやまず
(西島麦南)
雨降りて南吹くなり港町
(高浜虚子)
あら南風の洋白馬跳ね狆戯るる
(飯田蛇笏)
遺書封ず南風の雲のしかかり
(加藤楸邨)
いや白きは南風つよき帆ならむ
(大野林火)
校庭に南風きそひ祈念式終ふ
(松村蒼石)
潮満てり南風となりゆく朝の風
(及川貞)
濁流の渦巻く黄河南風鳴る
(松崎鉄之介)
釣り糸に底潮強し南風
(村山故郷)
天心に風船のゆく南風かな
(八木林之介)
南風によき水の香の魚一尾
(飯田龍太)
南風に龍馬舶来ものの靴を履き
(高澤良一)
南風の屋上にして祀るもの
(橋閒石)
南風の孔雀となりて死に挑む
(三橋鷹女)
南風の城の空ゆく石たたき
(飯田龍太)
南風の中ゆつくり浜へ能登老婆
(桂信子)
南風の浪桐咲く梢を走りつぐ
(山口誓子)
南風の花にまことの香ありけり
(飯田龍太)
南風はひだりの靴を重たくせり
(三橋鷹女)
南風は水面を吹けり水底も
(三橋鷹女)
南風や生れつ失せつ蟻の城
(芝不器男)
南風や海亀の殻波のまま
(阿波野青畝)
南風や竹刈込の荘の垣
(村山故郷)
南風やつんつるてんの貸浴衣
(鈴木真砂女)
南風や隣の鯉を吹いて来る
(正岡子規)
南風やのみあましたるソーダ水
(鈴木真砂女)
南風や破船の月日影もなし
(野見山朱鳥)
南風や水の中なる花蕾
(飯田龍太)
南風や漁師だまりの駄菓子店
(五十嵐播水)
二番手の鹿尾菜育てて南風の岩
(鈴木真砂女)
のけぞれば吾が見えたる吾子に南風
(中村草田男)
南風暮るる燈台事務所障子に灯
(亀井糸游)
南風しろく湖の岬ながら浪寄する
(山口誓子)
南風白し無人灯台錠かかる
(阿波野青畝)
南風つよしここ熟田津の地ときけば
(能村登四郎)
南風つよし綱ひけよ張れ三角帆
(橋本多佳子)
南風に降り著水の飛沫みじかけれ
(山口誓子)
南風吹くによき衣飾り城に来ぬ
(山口誓子)
南風吹けば海壊れると海女歎く
(橋本多佳子)
人々に夜も吹くなり南風
(高野素十)
向日葵の葉にとぶ蝿や南風
(飯田蛇笏)
船の笛南風の中にて洲本呼ぶ
(山口誓子)
噴煙を直角に曲ぐ南風の力
(山口誓子)
墓地よりの南風をまともの村に住む
(亀井糸游)
水底の藻をたわたわと揺るは南風
(三橋鷹女)
南吹く一座みな目を八方へ
(飯田龍太)
南風ふく波止場に雲のたゞよへり
(上村占魚)
耳もとに波のわきたつ南風かな
(久保田万太郎)
【関連季語・子季語】
黒南風 白南風
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