花曇り
【鑑 賞】花曇朧につづく夕べかな
江戸時代中期の俳人・文人画家である与謝蕪村(よさぶそん)の作品。
どんよりと曇った空が目に浮かんでくる句。
以下、季語「花曇り」の解説です。
【表 記】
(漢字) 花曇り
(ひらがな) はなぐもり
(ローマ字) hanagumori
【季 節】
春
【分 類】
天文
【意味・説明】
「花曇り」は、春に花が咲く頃に雲が空一面に立ち込めているような様子を表現する季語です。
“Hanagumori” is a season word that expresses the appearance of clouds covering the sky when flowers bloom in spring.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
あたらしき墓のあたりも花曇り
(飯田龍太)
鮎菓子をつゝむ薄紙はなぐもり
(長谷川双魚)
遺児愛す情おのづから花ぐもり
(飯田蛇笏)
石蔽ふ八つ手の葉など花曇
(久米正雄)
石崖の間の道や花曇
(野村泊月)
うしなひしものをおもへり花ぐもり
(日野草城)
馬の耳うごくばかりや花曇り
(飯田蛇笏)
漆蒔く女の正座花曇
(古館曹人)
沖かけて花曇せり河豚供養
(水原秋桜子)
買ひありく世帯道具や花曇
(久保田万太郎)
かき餅を焼いて出しけり花曇
(原月舟)
重なりて松も靉靆花曇
(久米正雄)
かたはらの大きな窓の花ぐもり
(日野草城)
かりそめの夫の座布団花ぐもり
(鈴木真砂女)
還俗の咎なき旅や花曇り
(飯田蛇笏)
嘴のずんと重たき花曇り
(高澤良一)
此処よりのセーヌの眺め花曇
(星野立子)
ことしまだ蜂の来らず花ぐもり
(久保田万太郎)
このわたを捜す留守居や花曇
(小澤碧童)
シャンゼリゼ驢馬鈴沈む花曇
(横光利一)
焼土の中道坦々と花曇
(山口青邨)
白波に菜の花曇り牛乳を呑む
(阿部みどり女)
退庁の帽をいただく花曇
(後藤夜半)
高々と遠忌の札や花曇
(野村泊月)
妻つれて兵曹長や花ぐもり
(高野素十)
土間にあむ峯入わらぢ花曇
(亀井糸游)
どむみりとあふちや雨の花曇
(松尾芭蕉)
鈍器もて物を割る音花曇り
(高澤良一)
のしかゝるもの杉ばやし花曇
(久保田万太郎)
花曇り御八つに食ふは団子哉
(夏目漱石)
花ぐもり風の逢瀬となりてゐし
(岸田稚魚)
花曇酒も満たせし鉄鉢ぞ
(羽部洞然)
花ぐもり白髪太夫の繭ひそか
(堀口星眠)
花ぐもり田にしのあとや水の底
(内藤丈草)
花曇り椿曇りの虚子旧居
(草間時彦)
花曇鉄の灰皿固き椅子
(香西照雄)
花曇二階にほせる旅衣
(上村占魚)
花曇人夫少き城普請
(鈴鹿野風呂)
花ぐもり掃きだすあひだ待ちにけり
(久保田万太郎)
花曇り日照るいとまのあるはあり
(高濱年尾)
花曇ひとりの素顔愛し続ぐ
(香西照雄)
花曇り南に黒しかはら竈
(池西言水)
婆が手の蕨あをしも花曇
(石田波郷)
病気とも元気ともなく花曇
(阿部みどり女)
降とまで人には見せて花曇
(井上井月)
干物にある薄影や花ぐもり
(五十崎古郷)
刺青(ほりもの)に通ふ女や花ぐもり
(日野草城)
水色の露台も看えて花ぐもり
(滝井孝作)
目をとぢて卵だく鶏花曇
(上村占魚)
もし降らば天津乙女ぞ花曇
(小林一茶)
【和歌・短歌に詠まれた「花曇り」】
くれ竹の
根岸の里にかくれたる
人を訪ふ日のうす花ぐもり
(正岡子規)
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