ピンク色の梅の花

春浅し

 

【鑑 賞】春浅く火酒したたらす紅茶かな

明治中期から昭和前期にかけての俳人・杉田久女(すぎたひさじょ)の作品。

春といっても寒さがまだ残っている頃の雰囲気に満ちている句。

(火酒とは、ウォッカ・ウイスキー・ブランデーなど、蒸留してアルコール分を多くした酒のことです。)

 

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以下、季語「春浅し」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 春浅し

(ひらがな) はるあさし

(ローマ字) haruasashi

 


季 節


 


【分 類】


時候

 


【意味・説明】


「春浅し」は、春になったものの、まだ完全には春がととのっていない感じを表現する季語です。


“Haruasashi” is a season word that expresses the feeling that although it has come to spring, spring has not yet completely reached.

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【例 句】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

美しき人を見かけぬ春浅き
(日野草城)

木々の枝こまやかに春浅きかな
(石川桂郎)

木より木にかよへる風の春浅き
(臼田亜浪)

くもるとき港さびしや春浅き
(中村汀女)

苔青く総立つ百合や春浅し
(長谷川かな女)

コート黒く足袋真白に春浅き
(阿部みどり女)

子は旅に春浅き富士晴れたりや
(日野草城)

そそのかす女の眉や春浅し
(夏目漱石)

それ以来誰にも逢はず春浅し
(鈴木花蓑)

鬣を白馬は染めぬ春浅く
(長谷川かな女)

何も書かぬ赤短冊や春浅し
(正岡子規)

春浅き色を織り込む錦かな
(原月舟)

春浅き回章に捺す朱印かな
(宮武寒々)

春あさき鏡前にとく喪髪かな
(西島麦南)

春浅き草喰む馬の轡かな
(飯田蛇笏)

春浅き鞍馬街道貴船かな
(草間時彦)

春浅き谷の窪みの水鏡
(佐藤鬼房)

春浅き寺に下宿をもとめけり
(内田百間)

春あさき人の会釈や山畑
(飯田蛇笏)

春浅き牡丹活ける妻よ茶焙は
(渡辺水巴)

春浅き水を渡るや鷺一つ
(河東碧梧桐)

春浅くくだもの折の移り香す
(宮武寒々)

春浅く心のどことなく浅く
(高浜年尾)

春浅く子のもの干して紐垂るる
(皆吉爽雨)

春浅くして老い人の相次ぐ死
(相馬遷子)

春浅く神曲ひらく朝のうち
(平井照敏)

春浅し百済観音の膝下まで
(細見綾子)

春浅しさゆらぎもなき松百本
(村山故郷)

春浅し寺の奥より川みえて
(井上雪)

春浅し水のほとりの常夜燈
(久保田万太郎)

玻璃に風どすんとばかり春浅き
(高澤良一)

吹き切つて灯影ひゞかん春浅き
(富田木歩)

ふとふれし鬢のかをりや春浅し
(中勘助)

よく晴れてアシカのひげや春浅し
(永井龍男)

わが作る小松菜畑春浅く
(山口青邨)

 


【関連季語・子季語】


浅き春

 


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