春一番
【鑑 賞】湯豆腐の葱やや固き春一番
昭和時代の俳人・鈴木真砂女(すずきまさじょ)の作品。
春一番が吹いても寒さがまだ残っている雰囲気に満ちている句。
以下、季語「春一番」の解説です。
【表 記】
(漢字) 春一番
(ひらがな) はるいちばん
(ローマ字) haruichiban
【季 節】
春
【分 類】
天文
【意味・説明】
春一番は、立春以後に初めて吹く、南からの強い風のことです。
Haruichiban is the strong wind from the south which blows for the first time after risshun.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
乙訓を春一番の走りぬけ
(阿波野青畝)
およぎ見ゆ春一番の野の欅
(皆吉爽雨)
かうしてはおられぬ性分春一番
(高澤良一)
凶暴の春一番を人ゆるす
(山口青邨)
紅梅の春一番にとぶ火かも
(皆吉爽雨)
声散つて春一番の雀たち
(清水基吉)
更ラ舟に春一番の砂すこし
(岡本眸)
死ぬがよいそれがいたはり春一番
(鳥居おさむ)
雀らも春一番にのりて迅し
(皆吉爽雨)
春一番歌ひ出したる地球かな
(仙田洋子)
春一番うめきもだゆる波の面
(壇一雄)
春一番奥の歯に蓄む貝の芯
(角川源義)
春一番顔あげて濤押し戻す
(原裕)
春一番借りし予言書積み置けば
(堀口星眠)
春一番狂へりわが胃また狂ふ
(相馬遷子)
春一番心の隅に火を点ず
(相馬遷子)
春一番言霊のごと駆け抜けし
(原裕)
春一番死神もまた矢を放つ
(古賀まり子)
春一番聖母は御子を抱き給ふ
(堀口星眠)
春一番煎薬の火を細めたり
(石川桂郎)
春一番角を踏ん張る栄螺殻
(百合山羽公)
春一番どすんと屋根にぶつかりぬ
(滝沢伊代次)
春一番二番三番涅槃西風
(清水基吉)
春一番野壺めざめて方と円
(百合山羽公)
春一番ひきゐし狆を抱きあぐる
(及川貞)
春一番仏間ひととき魂あそぶ
(井上雪)
春一番見かけ倒しも藝のうち
(佐藤鬼房)
春一番武蔵野の池波あげて
(水原秋桜子)
春一番やみて野に落つ月黄なり
(亀井糸游)
ひとところ水の凹みや春一番
(桂信子)
ふるさとの春一番を知らざりし
(右城暮石)
胸ぐらに母受けとむる春一番
(岸田稚魚)
揺れ熄まぬ春一番の椿山
(石田あき子)
夜の内に春一番の通りたり
(右城暮石)
呼ぶ声も吹き散る島の春一番
(中村苑子)
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