春の月
【鑑 賞】風出でて傾きそめぬ春の月
大正時代から昭和中期にかけての俳人・前田普羅(まえだふら)の作品。
風に吹かれている月という光景が目に浮かんでくる句。
以下、季語「春の月」の解説です。
【表 記】
(漢字) 春の月
(ひらがな) はるのつき
(ローマ字) harunotsuki
【季 節】
春
【分 類】
天文
【意味・説明】
「春月」として詠まれることも多い季語です。
It is a season word often used as “shungetsu”.
【例 句】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
会ふ人ももとよりあらね春の月
(中村汀女)
伊賀よりも甲賀は寒し春の月
(大峯あきら)
うち霧ふ芋の二葉や春の月
(金尾梅の門)
大いなる春の月あり山の肩
(杉田久女)
教会の塔の上なり春の月
(寺田寅彦)
子の言葉こころにおきて春の月
(松村蒼石)
この匂藪木の花か春の月
(芥川龍之介)
五六騎のゆたりと乗りぬ春の月
(河東碧梧桐)
婚礼の乗物多し春の月
(正岡子規)
山脈の空みどりなす春の月
(相馬遷子)
せゝらぎの三段ばかり春の月
(西山泊雲)
菜畑の風にうるめり春の月
(上村占魚)
蛤を買うて重たや春の月
(松本たかし)
春の月馬酔木の花を照らしけり
(山口青邨)
春の月ありしところに梅雨の月
(高野素十)
春の月淡々しくも満ちをれり
(相生垣瓜人)
春の月薄雲に入り雲を染む
(柴田白葉女)
春の月返すに早き波もなし
(井上井月)
春の月岸にかゞみて水を見る
(阿部みどり女)
春の月きらきらと木をのぼる水
(原裕)
春の月くもりて冴えて更けにけり
(日野草城)
春の月さしこむ家に宿とりて
(前田普羅)
春の月さはらば雫たりぬべし
(小林一茶)
春の月杖もちて来て誘わるる
(長谷川かな女)
春の月なまなか照りてかなしきよ
(久保田万太郎)
人だかりした跡ぬくし春の月
(桜井梅室)
人の妻を盗む狐や春の月
(松瀬青々)
百年は生きよみどりご春の月
(仙田洋子)
ふるさとや石垣歯朶に春の月
(芝不器男)
摩利支天の露店の上や春の月
(長谷川かな女)
み返ればすなはちやさし春の月
(久保田万太郎)
みやらびの歯の波いまは春の月
(細見綾子)
もつこりと森は盛られて春の月
(林翔)
もの忘れせし手つめたく春の月
(松村蒼石)
屋根屋根に乳の香流れ春の月
(原裕)
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