秋空に広がる鰯雲

鰯 雲

 

【鑑 賞】三十年前にもここに鰯雲

大正末から昭和後期にかけての俳人・三橋鷹女(みつはしたかじょ)の作品。

何ともいえない「懐かしさ」が感じられる句。

 

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以下、季語「鰯雲」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 鰯雲

(ひらがな) いわしぐも

(ローマ字) iwashigumo

 


季 節


 


【分 類】


天文

 


【意味・説明】


鰯雲は、秋の空に広がる、団々とした白い雲のことをいいます。

名前の由来は、この雲が出ると鰯が集まるといわれることです。


Iwashigumo are clusters of white clouds that spread across the autumn sky.

The name comes from the fact that sardines are said to gather when these clouds appear.

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

いくたりか女を経たり鰯雲
(上田五千石)

鰯雲いでて病餌をすすめけり
(百合山羽公)

鰯雲鰯いよいよ旬に入る
(鈴木真砂女)

鰯雲沖の帆影を恋ふ日かな
(村山故郷)

いわし雲想ひ幼き日にのみに
(中村汀女)

鰯雲かくまでひろき海や空
(山口青邨)

いわし雲着飾りし人墓の辺に
(村山故郷)

鰯雲暮れつつ龍の鱗となる
(山口青邨)

鰯雲けふの一日終るべし
(高野素十)

鰯雲叫ぶがごとく薄れけり
(平井照敏)

鰯雲巣箱に暗き穴ひとつ
(飯田龍太)

鰯雲鯛も蚫も籠りけり
(立花北枝)

鰯雲旅を忘れしにはあらず
(橋本多佳子)

鱗雲土に円描く子の遊び
(鷹羽狩行)

鰯雲出来て崩れて一枚に
(稲畑汀子)

鰯雲天にも潮目ありしかな
(百合山羽公)

鰯雲流るるよりも静かに征く
(加藤秋邨)

いわし雲何重たさや旅鞄
(中村汀女)

鰯雲はつきり峡を抜けし空
(稲畑汀子)

鰯雲バラの花びらもて埋めよ
(山口青邨)

鰯雲日かげは水の音迅く
(飯田龍太)

鰯雲まだ咲いてゐる未草
(飯田龍太)

鰯雲松の下枝に海見ゆる
(上村占魚)

鰯雲充ちて魚臭もすこしあり
(能村登四郎)

鰯雲遺言状も書かねばと
(鈴木真砂女)

鰯雲湯を出し顔に見上げゆく
(大野林火)

鰯雲読みし葉書は手に白し
(木村蕪城)

鰯雲より身辺の暮はやし
(山口誓子)

鰯雲わが青春の万華鏡
(鷹羽狩行)

鰯雲われらが舗道平らかに
(石塚友二)

動くもの鰯雲のみまひる谷
(加藤秋邨)

うすうすと今日仰がれつ鰯雲
(富安風生)

海に出てまだ已然形鰯雲
(伊藤白潮)

枝の蛇そのまた上の鰯雲
(西東三鬼)

沖からも更に加はり鰯雲
(能村登四郎)

溺るる夢このごろは見ず鰯雲
(能村登四郎)

外燈のいまともる上の鰯雲
(大野林火)

昏れてゆく空の刻々鰯雲
(稲畑汀子)

懸命であること寧し鰯雲
(平井照敏)

魚屋の鰯移して鰯雲
(山口青邨)

関ケ原鱗雲にも西東
(山口誓子)

妻がゐて子がゐて孤独いわし雲
(安住敦)

とある日の編目を密にいわし雲
(能村登四郎)

討伐に夏はもゆくか鰯雲
(相馬遷子)

蜻蛉はや高きをすすみ鰯雲
(阿波野青畝)

なまなかの鰯雲なり見捨てたり
(中村草田男)

肉親の死に音もなき鰯雲
(松村蒼石)

熱去りし頭をめぐらすや鰯雲
(松崎鉄之介)

花を摘み磔像を瞥つ鰯雲
(飯田蛇笏)

人影の山辺に消ゆる鰯雲
(飯田龍太)

 


【関連季語・子季語】


鱗雲  鯖雲

 


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