藁囲いがある寒牡丹

寒牡丹

 

【鑑 賞】 うすら日はありにけるかも寒牡丹

大正前期から昭和中期にかけての俳人・日野草城(ひのそうじょう)の作品。

日が当たってはいるものの、寂しさが感じられる句。

草城の次の句にも、同様の趣向が込められています。

 日あたりてあはれなりけり寒牡丹


寒牡丹を寒さから守るための藁囲いなどが詠み込まれた俳句としては、以下のようなの作品があります。

被せ藁の日に芳しき寒牡丹
(鷹羽狩行)

敷藁のみどり井桁に寒牡丹
(鷹羽狩行)

道行きにあらず藁被て寒牡丹
(鷹羽狩行)

藁覆に紅玉包む寒牡丹
(松本たかし)

藁苞に木納まりし寒牡丹
(右城暮石)

藁苞を洩るゝ日を恋ひ寒牡丹
(細見綾子)

藁の先いつも吹かれて寒牡丹
(桂信子)

 

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以下、季語「寒牡丹」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 寒牡丹

(ひらがな) かんぼたん

(ローマ字) kambotan

 


季 節


 


【分 類】


植物

 


【意味・説明】


寒牡丹は、年に二回(初春と初冬)咲く品種を仕立てたものです。

年一回咲きの牡丹の開花期を調整し、冬に咲かせたものは冬牡丹として区別します。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

赤き花一花大事に寒牡丹
(細見綾子)

おほいくさ勝ちつゝ咲かぬ寒牡丹
(渡辺水巴)

いつまでも寒き目のある寒牡丹
(岸田稚魚)

枝ぶりに齢歴たる寒牡丹
(高澤良一)

帰らんとしてまた戻り寒牡丹
(細見綾子)

垣間見て日の暮れぐれの寒牡丹
(安住敦)

かげりたる日を仰ぎけり寒牡丹
(野村泊月)

寒牡丹淡きは淡く濃きは濃き
(細見綾子)

寒牡丹息が湿らす菰の中
(能村登四郎)

寒牡丹いのちいたはり生きるべし
(安住敦)

寒牡丹うしなひ易き日を得たる
(岸風三楼)

寒牡丹うつし世雪を降らせけり
(安住敦)

寒牡丹きのふのわれを忘れをり
(河野南畦)

寒牡丹この叫びにも似たる紅
(能村登四郎)

寒牡丹この日崩ると記憶せむ
(日野草城)

寒牡丹こゑあたたかく讃へらる
(高澤良一)

寒牡丹咲きし証の紅散らす
(安住敦)

寒牡丹咲きしぶり咲きしぶりけり
(日野草城)

寒牡丹咲きそこねしは羞へる
(岸田稚魚)

寒牡丹挿して淋しさ忘るるか
(松本たかし)

寒牡丹寒さのひゞくくれなゐか
(細見綾子)

寒牡丹愁眉たちまちひらきけり
(安住敦)

寒牡丹炭ひく音をはばからず
(橋本多佳子)

寒牡丹空とんできし一羽毛
(皆川盤水)

寒牡丹力盡きたる一花あり
(岸田稚魚)

寒牡丹散つて炎をあげ凍てつきぬ
(石原八束)

寒牡丹散るくれなゐの羽ひらき
(石原八束)

寒牡丹月明にしていたましき
(日野草城)

寒牡丹どこか火事あるあをあをと
(加藤楸邨)

寒牡丹にして白なるは情浄し
(安住敦)

寒牡丹ぬくめむと息近寄せぬ
(草間時彦)

寒牡丹火を感じとる癖消えず
(加藤秋邨)

寒牡丹ふところ手して大き影
(阿部みどり女)

寒牡丹待たるゝのみの紅ほのと
(岸風三楼)

寒牡丹雪被てその緋ふかめけり
(鈴木真砂女)

恋飛脚大和路の寒牡丹かな
(安住敦)

濃き色は明日へと預け寒牡丹
(能村登四郎)

霜の刃に散りて彩たつ寒牡丹
(石原八束)

さきがけて怯えびらきの寒牡丹
(能村登四郎)

白湯飲んで息をとゝのへて寒牡丹
(細見綾子)

住職の素手培ひし寒牡丹
(右城暮石)

しんかんとあめつちはあり寒牡丹
(安住敦)

そのあたりほのとぬくしや寒牡丹
(高浜虚子)

遅々と咲き刻々と寒牡丹かな
(稲畑汀子)

父の世の如金屏と寒牡丹
(松本たかし)

苞割れば笑みこぼれたり寒牡丹
(高浜虚子)

天地の色なほありて寒牡丹
(高浜虚子)

なにくはぬ顔して見をり寒牡丹
(岸田稚魚)

なにはなしまなぶた熱し寒牡丹
(岸田稚魚)

羽子板の裏絵雪中寒牡丹
(後藤夜半)

花遂に霜に負けたり寒牡丹
(日野草城)

花のこゑ聞かむとかがみ寒牡丹
(鷹羽狩行)

花びらに響きのあがる寒牡丹
(石原八束)

花びらをうてなまかせに寒牡丹
(亀井糸游)

葉ばかりのものもありたり寒牡丹
(右城暮石)

はらからに妹ひとり寒牡丹
(森澄雄)

ひうひうと風は空ゆく冬牡丹
(上島鬼貫)

人老いて幼なに還る寒牡丹
(福田蓼汀)

人ごゑの絶えししじまに冬ぼたん
(高澤良一)

人去りてひとへに冱ゆる寒牡丹
(日野草城)

日と月のごとく二輪の寒牡丹
(鷹羽狩行)

ひとり来てだまつて見るや寒牡丹
(日野草城)

氷點下に紅つぼむ寒牡丹
(松瀬青々)

開きたる数だけ散つて寒牡丹
(安住敦)

紅隈に咲く此冬や寒牡丹
(尾崎紅葉)

招かれし一人のみなり寒牡丹
(水原秋桜子)

夕づけば雀言問ふ寒牡丹
(堀口星眠)

雪の使徒舞ふ染寺の寒牡丹
(石原八束)

よべは雪ちらつきしてふ寒牡丹
(細見綾子)

わが胸は妻を蔵せり寒牡丹
(森澄雄)

 


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