草 餅
【鑑 賞】草餅の少し固くて柔らかし
昭和時代の俳人・医師である高野素十(たかのすじゅう)の作品。
「固くて柔らかし」という表現が絶妙な句。
以下、季語「草餅」の解説です。
【表 記】
(漢字) 草餅
(ひらがな) くさもち
(ローマ字) kusamochi
【季 節】
春
【分 類】
人事
【意味・説明】
草餅は、蓬(よもぎ)などの葉を入れて搗いた餅です。
Kusamochi is a rice cake pounded with leaves such as yomogi(sagebrush).
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
鴬の来て染ぬらん草の餅
(服部嵐雪)
うたかたの膨らむ力草餅に
(阿波野青畝)
おほかたは力無き者ら草餅搗く
(石田波郷)
草餅といふは母ゐし四十代
(石川桂郎)
草餅に憩うて淋し一人旅
(高橋淡路女)
草餅に手をつけたまふ忌日かな
(後藤夜半)
草餅のいかにも日影まろきこと
(松山足羽)
草餅の色濃くかたく夜はふけぬ
(前田普羅)
草餅の黄粉落せし胸のへん
(高浜虚子)
草餅の草色深き忌明けかな
(宇多喜代子)
草餅の濃きも淡きも母つくる
(山口青邨)
草餅の十一臼目誰が搗く
(皆川白陀)
草餅の重箱重くいとけなく
(福田蓼汀)
草餅のすこし届きし志
(川端茅舎)
草餅のま青く指に憑きにけり
(柴田白葉女)
草餅のやはらかしとて涙ぐみ
(川端茅舎)
草餅や足もとに着く渡し舟
(富安風生)
草餅や川ひとすぢを景として
(鈴木真砂女)
草餅や床に藤原朝臣の図
(堀口星眠)
草餅や庇の下に閾なく
(阿波野青畝)
草餅や水にひろがる紙つぶて
(桂信子)
草餅をつくるわが摘むは銀蓬
(山口青邨)
草餅を黒しと思ひ食べ終る
(山口誓子)
草餅を頬ばりし時目が会ひぬ
(星野立子)
これはおん僧よりの草餅とよ
(荻原井泉水)
大仏に草餅あげて戻りけり
(正岡子規)
高坏に山と草餅仏生会
(森澄雄)
つきつめて草餅の香となりにけり
(加藤秋邨)
隣から草餅くれぬ旅戻り
(野村泊月)
庭先へ廻りて一つ草の餅
(草間時彦)
一と臼は白の餅なり草の餅
(石塚友二)
人に女男餅に草餅さくら餅
(林翔)
鄙なれば蓬草餅まゐらする
(正岡子規)
ふるさとや粗にして甘き草の餅
(上村占魚)
をとつひの草餅焼きて雨さびし
(皆吉爽雨)
【関連季語・子季語】
草の餅 草団子 蓬餅
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