日射しを受ける蜜柑の実

蜜 柑

 

【鑑 賞】 をとめ今たべし蜜柑の香をまとひ

大正前期から昭和中期にかけての俳人・日野草城(ひのそうじょう)の作品。

艶やかな少女の姿が目に浮かんでくる句。

この句の趣向と似たものが感じられる俳句作品には、次のような山口誓子(やまぐちせいし)の句があります。

 蜜柑の香染みたる指を洗はずに

 

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以下、季語「蜜柑」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 蜜柑

(ひらがな) みかん

(ローマ字) mikan

 


季 節


 


【分 類】


植物

 


【意味・説明】


「蜜柑」は冬の季語ですが、蜜柑の花は初夏に開くので「蜜柑の花」とすると夏の季語となります。

また、色がまだ青いものを「青蜜柑」といい、これは秋の季語となります。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

あからさまに蜜柑をちぎり且啖ふ
(西東三鬼)

大島の海越えて来し蜜柑掌に
(阿部みどり女)

思ひつめし心ほどけぬ蜜柑むく
(日野草城)

海峡の雨来て蜜柑しづく垂る
(西東三鬼)

柿山をのぼりて蜜柑山くだる
(右城暮石)

香ぐはしき転生一顆蜜柑受く
(成田千空)

かの夫人蜜柑むく指の繊かりしが
(安住敦)

鴨の声蜜柑ひそかに母にやる
(永田耕衣)

からかさを山の蜜柑がとんと打つ
(西東三鬼)

紀州より蜜柑文左の心づけ
(高澤良一)

君が掌の一顆の蜜柑いつ剥かる
(加藤楸邨)

好日の山の蜜柑は紅に富む
(百合山羽公)

濃くなりつ狭まる海や左右に蜜柑
(香西照雄)

子の忌過ぎもう酸くないか蜜柑供ふ
(及川貞)

探しもの又して疲れ蜜柑むく
(星野立子)

座礁船そのまゝ暁けぬ蜜柑山
(芝不器男)

さる帝蜜柑の数珠を持されけり
(相生垣瓜人)

十二月余白なくなる蜜柑の酸
(阿部みどり女)

背の窓に島山の月みかんむく
(及川貞)

先生の今の愛孫手に蜜柑
(京極杞陽)

旅の空北より晴れて蜜柑酸し
(橋閒石)

だぶだぶの惚け蜜柑ぞ好もしき
(相生垣瓜人)

短日の陽のうら~と蜜柑山
(高橋淡路女)

帳場整理みかんの皮も掃き捨てぬ
(西山泊雲)

遠山の雪見る市の蜜柑かな
(石井露月)

ねんごろの地擦り豊年蜜柑なり
(上田五千石)

葉つき蜜柑卒寿過ぎたる掌に
(阿部みどり女)

初富士や蜜柑ちりばめ蜜柑山
(石田波郷)

人住むや塵なだれさせ蜜柑の皮
(山口青邨)

日向ぼこ蜜柑山にて糖化して
(山口誓子)

故里につながる蜜柑ころがれり
(村越化石)

蜜柑売る媼は海を見あきたり
(古舘曹人)

蜜柑狩一雨あとの海蒼し
(河野南畦)

蜜柑剪る借りし鋏を鳴らし合ひ
(百合山羽公)

蜜柑すゝる嬰児を抱き母も飢ゆ
(岸風三楼)

蜜柑吸ふ目の恍惚をともにせり
(加藤楸邨)

蜜柑たべてよい火にあたつて居る
(尾崎放哉)

みかんのいろほどの風邪熱感じをり
(上村占魚)

みかんの皮二つ重ねて暇乞ふ
(高澤良一)

蜜柑船より提げ出でし銃濡るる
(宮武寒々)

蜜柑まだ酸きものと手を控えをり
(高澤良一)

蜜柑むく爪のいかさま苦爪かな
(久保田万太郎)

蜜柑むく初荷の馬の鼻がしら
(中村汀女)

みかん剥く指に寒さの残りけり
(久保田万太郎)

蜜柑村飯場の昼燈二つどまり
(香西照雄)

蜜柑山黄のまんだらに大き寺
(大野林火)

道々に蜜柑の皮をこぼし行く
(高浜虚子)

宮島の灯を指し旅の蜜柑むく
(五十嵐播水)

めでたさや餝りの蜜柑盗まれて
(正岡子規)

餅ぬくき蜜柑つめたき祭りかな
(正岡子規)

屋根苔も丸みて見せぬ蜜柑村
(香西照雄)

山の子にどどと瀧なす熟蜜柑
(飯田龍太)

闇ふかく蜜柑をひとつ探りえつ
(加藤楸邨)

熔岩のかひながいだき蜜柑山
(河野静雲)

累々と徳孤ならずの蜜柑哉
(夏目漱石)

 


【関連季語・子季語】


蜜柑の花  青蜜柑

 


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