日の光を受けてきらめく手水鉢の水

水温む

 

【鑑 賞】いつからとなく水道も水ぬるむ

大正時代から平成初期にかけての俳人・右城暮石(うしろぼせき)の作品。

いつのまにか訪れていた春に対する感慨が伝わってくる句。

 

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以下、季語「水温む」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 水温む

(ひらがな) みずぬるむ

(ローマ字) mizunurumu

 


季 節


 


【分 類】


地理

 


【意味・説明】


「水温む」は、春になって水の冷たさがゆるんでくることを表現する季語です。


“Mizunurumu” is a season word that expresses the waning coldness of the water in spring.

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

浅き夜の池をめぐりぬ水温む
(日野草城)

いきものゝ恋のしな~水温む
(石井露月)

犬の舌赤く伸びたり水温む
(高浜虚子)

浮きつづく杭根の泡や水ぬるむ
(杉田久女)

映る顔おだやかに水温みけり
(山口青邨)

漆椀はぢく雫や水温む
(内田百間)

縁側の少し高めや水温む
(波多野爽波)

大阪の気球林立水温む
(右城暮石)

貝を生けし笊沈めしが水ぬるむ
(河東碧梧桐)

籠の鳥に餌をやる頃や水温む
(夏目漱石)

辛うじて夜学修めし水温む
(久米正雄)

逆流をすこしこころみ水温む
(上田五千石)

月曜のルソーの絵より水ぬるむ
(皆吉司)

枯渇して湖底の樹林水温む
(古舘曹人)

孤独無限あざらし温む水くぐり
(稲垣きくの)

この池の愛蔵の水温みけり
(秋元不死男)

さうかとも思ふことあり水温む
(星野立子)

さねさしの相模大野の水ぬるむ
(上田五千石)

死といふ字いくたび書けば水温む
(長谷川双魚)

少し転げてとどまる蜷や水ぬるむ
(杉田久女)

底の穢のゆるぎそめけり水温む
(西山泊雲)

ダンディーな鴨の襟首水温む
(高澤良一)

土出でて歩む蟇見ぬ水ぬるむ
(杉田久女)

十日ほど日記ためたり水温む
(久保田万太郎)

流れ行どんどの灰や水ぬるむ
(正岡子規)

流れ藻や堰のあたりに温む水
(桂信子)

禰宜渡る水のぬるみや紙屋川
(正岡子規)

野に出づるひとりの昼や水温む
(桂信子)

廃材を焼き煙らせて水温む
(右城暮石)

松伐つて石の凹みや水温む
(会津八一)

水温むアルルの橋の水に似て
(右城暮石)

水ぬるむ岸に大きな父の影
(原裕)

水ぬるむ杭を離るゝ芥かな
(内田百間)

水温む如くに我意得つゝあり
(星野立子)

水温む静かに思ふことのあり
(星野立子)

水温む臀丸出しのヴィーナスに
(山口誓子)

水温むとは家鴨が家鴨追ふことか
(安住敦)

水温むとも動くものなかるべし
(加藤秋邨)

水ぬるむ鳥の浮寝や昆陽池
(会津八一)

水温む奈良はあせぼの花盛
(原石鼎)

水温む沼に繆うて径かな
(日野草城)

水ぬるむ巻葉の紐の長かりし
(杉田久女)

水温む真鯉の口の厚く白く
(山口青邨)

水温む先づ子が映り何か映り
(菖蒲あや)

水ぬるむむかし山羊の眼鰍の眼
(飯田龍太)

水温む夕べ樹膚のかがやきて
(石原八束)

水温む四方のひかりに林檎園
(西島麦南)

耳たぶに岸辺の日差し水ぬるむ
(高澤良一)

耳までの帽をあみだに水温む
(橋閒石)

めがね橋人を渡さず水温む
(山口青邨)

 


【関連季語・子季語】


温む水

 


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