冬の寒空

虎落笛

 

【鑑 賞】 白日の天地悲しむ虎落笛

昭和時代の俳人・相馬遷子(そうませんし)の俳句作品。

寒々とした冬の情景が目に浮かんでくる句。

 

スポンサーリンク

 

 

以下、季語「虎落笛」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 虎落笛

(ひらがな) もがりぶえ

(ローマ字) mogaribue

 


季 節


 


【分 類】


天文

 


【意味・説明】


虎落笛とは、冬の烈しい風が竹垣や柵などに吹きあたって、笛のような音を発することをいいます。

そもそも「もがり(虎落)」とは、枝を落とした竹を組み合わせて縄で結び付けた柵(=竹矢来:たけやらい)や、紺屋(こうや:一般に染物屋)の物干し場のことをいいます。

江戸時代には、「もがり(強請り、虎落)」とは「ゆすり、かたり」を意味する言葉でした。

スポンサーリンク

 


【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

愛憎や卓上に吹く虎落笛
(塚本邦雄)

甘酒の箸は一本もがり笛
(阿波野青畝)

天の邪鬼虎落笛をば吹き遊ぶ
(相生垣瓜人)

有明は破船の形にもがりぶえ
(上田五千石)

ある年のある夜の記憶虎落笛
(飯田龍太)

一汁一菜垣根が奏づ虎落笛
(中村草田男)

牛が仔を生みしゆふべの虎落笛
(百合山羽公)

海鳴りか虎落笛かや暮れ落ちぬ
(高木晴子)

海にては何に依りつく虎落笛
(山口誓子)

売りに来し潮濡章魚や虎落笛
(石塚友二)

餓ゑきるまで食べぬが償ひ虎落笛
(香西照雄)

オリオンの出に先んじて虎落笛
(上田五千石)

折鶴蘭鏡にうつり虎落笛
(阿部みどり女)

外燈のさき海の闇もがり笛
(大野林火)

帰り来し故郷の山河虎落笛
(星野立子)

風の子の一と群れ過ぎぬ虎落笛
(川端茅舎)

かつて師のいまわが胸過ぐ虎落笛
(楠本憲吉)

関東のもの高天の虎落笛
(山口誓子)

聞き覚えありて鶏舎の虎落笛
(右城暮石)

胸廓の裡を思へば虎落笛
(日野草城)

仰臥して死後や朝の虎落笛
(古舘曹人)

愚痴きいてくれる人欲し虎落笛
(鈴木真砂女)

けふのすぐきのふとなりて虎落笛
(長谷川双魚)

子が寝ねば妻が叱れず虎落笛
(加藤秋邨)

来ずなりしは去りゆく友か虎落笛
(大野林火)

この齢で何をおそるゝ虎落笛
(及川貞)

米量る手の合掌めきし虎落笛
(能村登四郎)

三千年先人の声もがり笛
(百合山羽公)

葬送の堂を包みて虎落笛
(稲畑汀子)

立枯れて芙蓉も鳴るや虎落笛
(石川桂郎)

たまの早寝をなし得と別る虎落笛
中村草田男)

妻の見舞怠りし夜の虎落笛
(能村登四郎)

徒然に吹く者あれや虎落笛
(相生垣瓜人)

訪ひ来しは待つ人ならず虎落笛
(鈴木花蓑)

燈火の揺れとどまらず虎落笛
(松本たかし)

東京の一人ぐらしや虎落笛
(稲畑汀子)

泣き寝入るは遺族のみかは虎落笛
(香西照雄)

何か近づく身は一本の虎落笛
(加藤秋邨)

肉親の顔が遠のく虎落笛
(柴田白葉女)

日輪の月より白し虎落笛
(川端茅舎)

寝返れば耳吹く風や虎落笛
(石塚友二)

人の死は誰のあと追ふ虎落笛
(秋元不死男)

灯を消せば階下の納屋の虎落笛
(羽部洞然)

富士の頭を越えて高きを虎落笛
(山口誓子)

太梁は夜に艶増す虎落笛
(能村研三)

またたくはわが知れる星虎落笛
(村越化石)

抹殺の線を真直に虎落笛
(殿村菟絲子)

みちのくや厠もつとも虎落笛
(草間時彦)

紫の氷かなしや虎落笛
(川端茅舎)

虎落笛あかりが消えし添乳どき
(百合山羽公)

虎落笛海にすりへる澪つくし
(百合山羽公)

虎落笛枯菩提樹のひとり聴く
(百合山羽公)

虎落笛聞きしばかりの日数かな
(右城暮石)

虎落笛吉祥天女離れざる
(橋本多佳子)

虎落笛客去りし身の置きどころ
(鈴木真砂女)

虎落笛子供遊べる声消えて
(高浜虚子)

虎落笛子にも遺らぬ稿を継ぐ
(石田波郷)

虎落笛この一管は父の国
(松山足羽)

虎落笛叫びて海に出で去れり
(山口誓子)

虎落笛叫ぶ少年と銃の隙
(原裕)

虎落笛色紙一枚約果す
(石川桂郎)

虎落笛絨毯に曳く折鶴蘭
(阿部みどり女)

虎落笛樹氷の林抜けるとき
(山口誓子)

虎落笛旅寝の胸に指を組む
(山口誓子)

虎落笛痛飲のこと我になし
(相生垣瓜人)

虎落笛涙にじみてゐたりけり
(相馬遷子)

虎落笛鳴門の橋が吹いてゐる
(阿波野青畝)

虎落笛眠に落ちる子供かな
(高浜虚子)

虎落笛ねむれぬ病我にあり
(上村占魚)

虎落笛のゆくさき見ゆる夕の川
(柴田白葉女)

虎落笛母大切に籠りけり
(野村喜舟)

虎落笛人の不運に隙間なし
(内藤吐天)

虎落笛ひとふしはわが肺鳴れり
(大野林火)

虎落笛ふるへやまざる壺の花
(阿部みどり女)

虎落笛闇の帷に閃閃と
(松本たかし)

虎落笛夢青白き世に戻り
(飯田龍太)

虎落笛炉に酔ふ耳にかなでけり
(西島麦南)

もがり笛洗ひたてなる星ばかり
(上田五千石)

もがり笛風の又三郎やあーい
(上田五千石)

もがり笛固き夜具とも思はなく
(中村汀女)

もがり笛左千夫に起り在りつづく
(平畑静塔)

もがりぶえとぎれとぎれのものがたり
(山口誓子)

もがりぶえ初めに叫びありきとぞ
(上田五千石)

山の雲海へ移りぬ虎落笛
(稲畑汀子)

夕づつの光りぬ呆きぬ虎落笛
(阿波野青畝)

 


【関連季語・子季語】


 

 


【他の季語を探す】


春の季語

夏の季語

秋の季語

冬の季語

新年の季語

五十音で探す

 

スポンサーリンク