寝正月
【鑑 賞】 風の音きこゆるばかり寝正月
大正前期から昭和中期にかけての俳人・日野草城(ひのそうじょう)の作品。
お正月の句ながらも寂しさが感じられる句。
この句の趣向と似たものが感じられる俳句作品は、高田蝶衣(たかだちょうい)の次の句。
松風もつのればわびし寝正月
「風」と「寝正月」が詠み込まれた俳句としては、阿部みどり女(あべみどりじょ)の次の作品があります。
玄関に風の訪れ寝正月
以下、季語「寝正月」の解説です。
【表 記】
(漢字) 寝正月
(ひらがな) ねしょうがつ
(ローマ字) neshogatsu
【季 節】
新年
【分 類】
人事
【意味・説明】
寝正月とは、正月にどこにも出かけずに寝て過ごすことをいいます。
また、正月に病気などで寝ている場合にも、「寝正月」ということがあります。
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
一さきに雀のめざめ寝正月
(原石鼎)
飲食の子規を羨しむ寝正月
(石田波郷)
大濤の上げし日の出の図寝正月
(山口青邨)
京の端の北白川や寝正月
(日野草城)
虚子庵に不参申して寝正月
(松本たかし)
「黒髪」の御山の許す寝正月
(平畑静塔)
けもの鍋こと~煮えて寝正月
(石橋秀野)
こつとりをことりと落し寝正月
(日野草城)
金輪際決め込む妻が寝正月
(岸田稚魚)
骰ひとつ畳の上に寝正月
(鷹羽狩行)
「娑婆遊び」と言えど曖味寝正月
(金子兜太)
透きとほる葛湯さみしき寝正月
(中村苑子)
辰年の男九十六歳寝正月
(山口青邨)
喰べさしのぽんかんにほふ寝正月
(日野草城)
次の間に妻の客あり寝正月
(日野草城)
南天を食べに来る鵯寝正月
(草間時彦)
寝正月賀客のベルのまた響く
(日野草城)
寝正月さめてふと思ふ梅見月
(原石鼎)
寝正月せめて敷布の新しく
(野村喜舟)
寝正月誰かが起きてをりにけり
(稲畑汀子)
寝正月出来ざる性と思ひけり
(稲畑汀子)
寝正月退屈の虫だましだまし
(佐藤鬼房)
寝正月なれど天地広くゐる
(森澄雄)
寝正月の今宵も星の美しき
(村山古郷)
寝正月鶲を欲れば鶲来る
(橋本多佳子)
寝正月世に処する道練りにけり
(阿波野青畝)
老成(ねびる)とはいびることらし寝正月
(佐藤鬼房)
寝ることのさびしさ知るや寝正月
(林翔)
ははそはの母にすすむる寝正月
(高野素十)
把手磨けど握手は嫌ひ寝正月
(香西照雄)
東山晴れて曇りて寝正月
(日野草城)
人々のなさけを謝して寝正月
(山口青邨)
襖絵の美女に囲まれ寝正月
(鷹羽狩行)
ふるさとにのこす名もなく寝正月
(古舘曹人)
僕婢なきわが代うれしや寝正月
(上田五千石)
幻の秘宝が恃み寝正月
(佐藤鬼房)
みどり児の起きてしまひし寝正月
(稲畑汀子)
廻ぐる日の色麗かや寝正月
(川端茅舎)
目出度さや老いて互に寝正月
(高浜虚子)
めをととてくしきえにしや寝正月
(上田五千石)
山棲みの畳青しも寝正月
(飯田蛇笏)
夜となりて吉夢むさぼる寝正月
(金子兜太)
乱行の雪となりけり寝正月
(上田五千石)
われになき才智のぞまず寝正月
(上村占魚)
我も折れていはるるままに寝正月
(富安風生)
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