笊の上の二匹の秋刀魚

秋刀魚

 

【鑑 賞】秋刀魚食ふ月夜の柚子をもいできて

昭和時代から平成初期にかけての俳人・加藤秋邨(かとう しゅうそん)の作品。

秋刀魚と月夜の組合せによって、秋の風情が強く感じられる句。

 

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以下、季語「秋刀魚」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 秋刀魚

(ひらがな) さんま

(ローマ字) samma

 


季 節


 


【分 類】


動物

 


【意味・説明】


秋刀魚は、秋の味覚を代表する食材として親しまれてきました。

「秋刀魚」という漢字で表記されるようになったのは、大正時代からのことです。


Saury has been popular as an ingredient that represents the taste of autumn.

It was from the Taisho period that the kanji characters for “秋刀魚” began to be used.

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

脂火の秋刀魚が照らす鍬の丈
(秋元不死男)

溢れゐる秋刀魚もとめて包みゆく
(百合山羽公)

荒海の秋刀魚を焼けば火も荒らぶ
(相生垣瓜人)

稲積んで忙しき夕餉さんま焦ぐ
(柴田白葉女)

海風にほぐるるほのほ秋刀魚焼く
(鷹羽狩行)

遠方の雲に暑を置き青さんま
(飯田龍太)

怖ろしや秋刀魚の剣洗ふ妻
(辻田克巳)

風の日や風吹きすさぶ秋刀魚の値
(石田波郷)

空転りして暮れし日の秋刀魚食ふ
(百合山羽公)

ここ残し秋刀魚の食べ方知らぬ妻
(高澤良一)

小店卯波秋刀魚に客を煙らせて
(鈴木真砂女)

これは一槍と呼びたき青秋刀魚
(鷹羽狩行)

これやこの旬のさんまも冷凍魚
(石塚友二)

さんま食いたしされどさんまは空を泳ぐ
(橋本夢道)

秋刀魚括りて百姓歩きの前のめり
(加藤秋邨)

秋刀魚食ふ敢えて値段は聞かずにおく
(高澤良一)

秋刀魚競る渦に女声の切れつぱし
(橋本多佳子)

さんま殿妻の悲嘆を句で申す
(橋本夢道)

秋刀魚の口尖ればちよんと切るかなし
(山口青邨)

秋刀魚焼き宝くじ焼く青焔
(右城暮石)

秋刀魚焼き妻はたのしきやわが前に
(加藤楸邨)

秋刀魚焼き年金暮し帳尻合ふ
(高澤良一)

秋刀魚焼く香に踏む夜の鉋屑
(木村蕪城)

秋刀魚焼く煙りの中の割烹着
(鈴木真砂女)

秋刀魚焼く煙の逃ぐるところなき
(菖蒲あや)

秋刀魚焼く煙まぶれに何言ふぞ
(石塚友二)

秋刀魚焼く煙を逃げて机かな
(石川桂郎)

秋刀魚焼くためとて残し炭団扇
(石川桂郎)

秋刀魚焼く匂の底へ日は落ちぬ
(加藤楸邨)

秋刀魚焼く憎しみは鋭き焔に焼かれ
(三橋鷹女)

秋刀魚焼くひそ~話沙禰たのし
(河野静雲)

秋刀魚焼く戻りて子らよ家に食せ
(石塚友二)

さんま落下天より海豹の口ヘ
(山口青邨)

私小説さておき秋刀魚焦がすかな
(櫂未知子)

受難図に棚引く秋刀魚けむりかな
(秋元不死男)

新婚の昌子美しさんま焼く
(杉田久女)

全長に回りたる火の秋刀魚かな
(鷹羽狩行)

旅の帰途夫待つ妻は秋刀魚買ふ
(及川貞)

妻と吾と旬の秋刀魚を二等分
(高澤良一)

妻よ子よ黒焦げ秋刀魚食膳に
(村山故郷)

東京に瓦斯火は赤し秋刀魚焼く
(石川桂郎)

東京の口一千万や初秋刀魚
(山口青邨)

道玄坂さんま出るころの夕空ぞ
(久米正雄)

なんとなく秋刀魚一匹焼けるまで
(岸田稚魚)

新妻の厨著愛たしさんま焼く
(杉田久女)

初秋刀魚世話焼き口調殖ゆ妻と
(高澤良一)

ほろほろとにがき脂まで秋刀魚食ふ
(石塚友二)

店々に海霧より揚げし青さんま
(大野林火)

痩せ秋刀魚見る間に冷ゆる木賃宿
(加藤知世子)

病むは癒ゆ秋刀魚の秋の到りけり
(石川桂郎)

 


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