蜂蜜

 

【鑑 賞】 咳をする母を見あげてゐる子かな

大正時代から昭和末期にかけての俳人・中村汀女(なかむらていじょ)の俳句作品。

母を思いやる子供の可愛らしさが目に浮かんでくる句。

 

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以下、季語「咳」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 咳

(ひらがな) せき、しわぶき

(ローマ字) seki

 


季 節


 


【分 類】


人事

 


【意味・説明】


咳は、気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動で、通常繰り返して起こります。

咳の同義語に「咳嗽(がいそう)」があります。

咳や喉の痛みには蜂蜜(はちみつ)がその症状を軽減するとされていますが、1歳未満の乳児には乳児ボツリヌス症を発症する可能性があるので与えてはいけません。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

あさあさを芙蓉の霧に咳き入りぬ
(中尾白雨)

あの咳は父よ溝板ふんで来る
(菖蒲あや)

あばら家に人の居は居て咳にけり
(清原枴童)

あはれめり座にたへかねるほど咳くを
(久保田万太郎)

丑満の雪に覚めゐて咳殺す
(臼田亞浪)

鴬がぎよつとするぞよ咳ばらひ
(小林一茶)

梅が香や妻戸の内の咳はらひ
(井上井月)

老の咳しばし満座を領しけり
(香西照雄)

起き出でて咳をする子や寒雀
(中村汀女)

おなじ人おなじ机に咳しつぐ
(川島彷徨子)

思ふこと多ければ咳しげく出づ
(日野草城)

帰り咲く木のあり尼僧咳秘むる
(臼田亞浪)

風邪二日咳次ぎかめる洟一斗
(石塚友二)

壁いちまい抜け来る咳に力あり
(高澤良一)

刈跡の田に疳だかきわれの咳
(川島彷徨子)

枯菊を焚く人とほく咳きゐたり
(石原舟月)

がんこな咳のあいま白梅の瓶の位置をなおす
(吉岡禅寺洞)

元日雨降り病む母の咳にひとりいる
(栗林一石路)

北風にいらだてば咳きし胸ほてる
(川島彷徨子)

金柑は咳の妙薬とて甘く
(川端茅舎)

口笛の咳そそる木の芽夕べかな
(富田木歩)

こは父の咳なりき椎の花降れり
(千代田葛彦)

ごほ~と咳きて庵主蚊帳より
(清原枴童)

こん~と咳きて山葵の花は見ず
(萩原麦草)

叫ぶごと咳くたび命さみしくす
(古賀まり子)

笹鳴の木の裏あたり母の咳
(長谷川かな女)

時雨忌のともしび遠く咳き入りぬ
(金尾梅の門)

詩は無償胸絞り揺る咳も久し
(香西照雄)

ジャズの中咳を落してわが過ぎぬ
(石田波郷)

咳きて思ひ寝の鴨乱さゞれ
(篠田悌二郎)

咳をしてひよどりを驚かす
(細見綾子)

咳くと胸の辺に月こぼれきぬ
(角川源義)

咳けば土管の中にマッチの火
(石川桂郎)

咳けば夜も眼中の火と闘ひぬ
(加藤楸邨)

炭の香や奥に聞ゆる咳払へ
(会津八一)

咳きいでて夜半の時雨を遠くしぬ
(林翔)

咳き入るや涙にくもるシクラメン
(臼田亜浪)

咳入れる人に説きやめ十夜僧
(河野静雲)

咳終へて遙かな国に来し思ひ
(大野林火)

咳がまんしてにこやかに応対す
(稲畑汀子)

咳がやまない背中をたたく手がない
(種田山頭火)

咳こぼれいづこにこもる夜居の僧
(筑紫磐井)

咳込めど目は物を見てゐてかなし
(京極杞陽)

咳き込めば臓腑七転八倒す
(高澤良一)

咳き込めば我火の玉のごとくなり
(川端茅舎)

咳しつゝ歩き来る子や稲埃
(高野素十)

咳きしつつ遠賀の蘆原旅ゆけり
(橋本多佳子)

咳きながら十一月に入りけり
(阿波野青畝)

咳きにせく哀しき妻となりにけり
(久保田万太郎)

咳の子守る扁平な家雁渡る
(細見綾子)

咳一つ飛びて枯木の枝光る
(内藤吐天)

咳き臥すや女の膝の聳えをり
(石田波郷)

咳止んでわれ洞然とありにけり
(川端茅舎)

咳をして厠の中の人わかる
(田川飛旅子)

咳をしても一人
(尾崎方哉)

世辞ここだ咳くことも又多し
(香西照雄)

ぜんそくのその咳ゆゑにあはれなり
(高浜年尾)

それからのこと妻の墓にきて咳こぼす
(栗林一石路)

煖炉消え咳金属の音を返す
(阿部みどり女)

月夜風ある一人咳して
(尾崎放哉)

妻の留守ひとりの咳をしつくしぬ
(日野草城)

てのひらで押さへて咳の震源地
(高澤良一)

人間が居りて咳する芽木の中
(右城暮石)

初霜やひとりの咳はおのれ聴く
(日野草城)

母とわれ夜寒の咳をひとつづつ
(桂信子)

母の咳道にても聞え悲します
(大野林火)

ひとなかに咳してゐたる己れかな
(草間時彦)

火の玉の如くに咳きて隠れ栖む
(川端茅舎)

灯を消して咳くや年ゆく夜の底に
(栗林一石路)

冬空の一片落ちてくる咳のあと
(桜井博道)

蓬髪を抱きて火口に女咳く
(石原八束)

ほうほうの体で逃げ出す咳地獄
(高澤良一)

干しためし刀豆咳に効くとこそ
(稲畑汀子)

松とぼ~そのやうに咳せし思ふ
(細見綾子)

松深く東風の寒さに咳き入りぬ
(久米正雄)

胸の中がらんどうなり咳く度に
(野見山朱鳥)

黙読に胸押せば咳く夜寒かな
(富田木歩)

山枯れたり遥に人の咳ける
(相馬遷子)

行く人の咳こぼしつゝ遠ざかる
(高浜虚子)

夢のごと咳の果にて紙燃ゆる
(桜井博道)

代々木踏切越す老優と咳落し
(古沢太穂)

留守居妻他人の咳に夜をたのむ
(竹下しづの女)

レスラーが咳してゐたる丸の内
(皆吉司)

わが咳けば寒鯉鰭をうごかしぬ
(富安風生)

わが咳けば百巻ひびく庵かな
(阿波野青畝)

 


【関連季語・子季語】


咳く(しわぶく)

 


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