春 愁
【鑑 賞】春愁や些細なことに気落ちして
明治中期から昭和中期にかけての俳人・高浜虚子(たかはまきょし)の作品。
ふとしたことで感じてしまう春特有の心境が感じられる句。
以下、季語「春愁」の解説です。
【表 記】
(漢字) 春愁
(ひらがな) しゅんしゅう
(ローマ字) shunshu
【季 節】
春
【分 類】
人事
【意味・説明】
春愁は、春に特有のものうい感情を表現する季語です。
Shunshu is a season word that expresses the laziness that is unique to spring.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
クリスマスローズ春愁とにあらず
(後藤夜半)
こだはつてをり春愁といふべきか
(高木晴子)
春愁に堪へず笑ひこかしたり
(室生犀星)
春愁の或る日山椒魚を見に
(西島麦南)
春愁の襟紫に掻きあはす
(長谷川かな女)
春愁の屋上園は水噴ける
(岸風三楼)
春愁の女けはしく男見る
(高濱年尾)
春愁のかぎりを躑躅燃えにけり
(水原秋桜子)
春愁の子の文長し憂へよむ
(杉田久女)
春愁のセロ抱き弾くは父の影
(松山足羽)
春愁の小さき嘘を恨みけり
(上村占魚)
春愁の机古りたる桑づくゑ
(及川貞)
春愁ののどをうるほす旅の夜
(阿部みどり女)
春愁のはさみ使へば鳴る小鈴
(上村占魚)
春愁の一ときを猫侍るなり
(及川貞)
春愁のまま撮られたる顔写真
(能村研三)
春怨の麗妃が焚ける香煙はも
(杉田久女)
春愁は巷の音も聞いてゐて
(細見綾子)
春愁や鏡に沈むおのが顔
(日野草城)
春愁や虚構の恋の捨てがたく
(山口青邨)
春愁や草の柔毛のいちしるく
(芝不器男)
春愁や瀬戸の暁蜑もぐる
(阿部みどり女)
春愁やのこして蕎麦のふた三すぢ
(上田五千石)
春愁や日当ればわが影生れぬ
(加倉井秋を)
春愁や冷えたる足を打ち重ね
(高浜虚子)
春愁や膝の間のうまごやし
(内藤吐天)
春愁やはげまし呉るゝ妻の霊
(河野静雲)
春愁や一と日夕空街に澄む
(中村汀女)
春愁や平目の顔に眼がふたつ
(草間時彦)
春愁やプピープピーと千鳥笛
(阿部みどり女)
春愁や触れて冷たきかたばみ葉
(右城暮石)
春愁や三椏の花匂はざる
(細見綾子)
春愁をづかづか歩く渚かな
(鈴木真砂女)
昔日の春愁の場木々伸びて
(中村草田男)
何菩薩春愁華岳ゑがきける
(水原秋桜子)
【関連季語・子季語】
春愁い 春の愁い
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