卒業証書

卒 業

 

【鑑 賞】 待たれたる卒業なりし吾子よ嬉し

昭和時代の俳人・高浜年尾(たかはまとしお)の作品。

ようやく卒業を迎えた子に対する親の思いが強く伝わってくる句。

この句と同じく「吾子(あこ:わが子の意)」が詠み込まれていて、似た趣向が感じられる俳句作品としては、石川桂郎(いしかわけいろう)の次の句があります。

 卒業歌青き吾子の頭見当りぬ

また、鈴木しげを(すずきしげを)の次の作品にも「吾子」が詠まれています。

 卒業の素顔の吾子をよしと見き


「卒業」と「子」が詠み込まれている俳句を、いくつかみてみましょう。

親も子も同じ涙し卒業す
(高浜年尾)

靴買うて卒業の子の靴磨く
(杉田久女)

末の子の見上ぐる背丈卒業す
(稲畑汀子)

卒業の子に電報すよきあした
(杉田久女)

卒業の子の行く道はあるがまま
(稲畑汀子)

卒業の子のむすびたるリボンかな
(上村占魚)

卒業の素顔の吾子をよしと見き
(鈴木しげを)

一人子の卒業めでたかりけるよ
(高浜年尾)

 

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以下、季語「卒業」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 卒業

(ひらがな) そつぎょう

(ローマ字) sotsugyo

 


季 節


 


【分 類】


人事

 


【意味・説明】


卒業とは、学校が規定する全課程を修了することを意味し、対義語は入学です。

卒業を記念して行われる行事として卒業式があり、日本では 3月に行われることが多くみられます。

卒業式が現在のような独立した式となったのは、明治の初期頃といわれています。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

アネモネは瓶に短かく卒業す
(岸風三楼)

一を知つて二を知らぬなり卒業す
(高浜虚子)

うなゐ髪あぐべくのびぬ卒業す
(富安風生)

梅紅白よし君と君卒業す
(山口青邨)

運命は笑ひ待ちをり卒業す
(高浜虚子)

今日は孫卒業の日よ何かせん
(星野立子)

国貧し大学貧し卒業す
(高野素十)

雲を洩る日のひとすぢや卒業す
(大野林火)

劇に出て鼠の役や卒業す
(田川飛旅子)

交換日記少し余して卒業す
(黛まどか)

ステインドグラスの余光卒業す
(行方克巳)

青春の一歩は重し卒業す
(稲畑汀子)

卒業す片恋少女鮮烈に
(加藤楸邨)

卒業といふ美しき別かな
(清崎敏郎)

卒業といふ卒業かとも思ふ
(行方克巳)

卒業に下宿の荷物まとめけり
(上村占魚)

卒業の一番二番女の子
(高野素十)

卒業の丘に椿の咲きにけリ
(岸風三楼)

卒業のきのふとなりし友に逢ふ
(百合山羽公)

卒業のこの門出でていづくへか
(福田蓼汀)

卒業の娘らに春秋いかならむ
(西村和子)

卒業の日記にはさむ菫摘む
(山口青邨)

卒業の美女より水の如き礼
(平畑静塔)

卒業のめもとすずしく泣く娘かな
(西島麦南)

卒業のをさなの答辞師に添はれ
(皆吉爽雨)

卒業は近し枯木の銀杏ども
(山口青邨)

卒業や浮世の濤の音きこゆ
(日野草城)

卒業や丘は斜に櫟立ち
(中村汀女)

卒業や造花のバラに蕋を植ゑ
(三橋鷹女)

卒業やそれぞれ風の中へ散り
(鷹羽狩行)

卒業やちび靴はくも今日限り
(杉田久女)

卒業を祝ふ一人を忘れゐし
(中村汀女)

たはやすく教師忘らる卒業後
(能村登四郎)

つじつまの合ひし顔して卒業す
(長谷川双魚)

つまだちて卒業式の歌歌ふ
(清崎敏郎)

ともかくも卒業したるめでたさよ
(富安風生)

はだれ野の安曇に聞けり卒業歌
(及川貞)

ぼたん雪卒業の日のひねもすを
(百合山羽公)

ま二つに割れたる辞書や卒業す
(五十嵐播水)

ゆく雲の遠きはひかり卒業歌
(古賀まり子)

 


【関連季語・子季語】


卒業式  卒業証書  卒業歌

 


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