空を舞う鷹

 

【鑑 賞】 初富士や樹海の雲に青鷹

明治中期から昭和中期にかけての俳人・飯田蛇笏(いいだだこつ)の俳句作品。

初富士に浮かぶ雲と鷹という情景に清々しさが感じられる句。


「鷹」と「富士」が詠み込まれた俳句作品としては、次のようなものがあります。

大北風にあらがふ鷹の富士指せり
(臼田亞浪)

鷹翔ける影ほのかにて雪解富士
(飯田蛇笏)

なにか獲て裏富士めざす青鷹
(飯田蛇笏)

初富士や鷹二羽比肩しつつ舞ふ
(中村草田男)

富士を背の越前岳に蒼鷹
(松崎鉄之介)

わが文業ここに鷹舞ひ遠き富士
(中村草田男)

 

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以下、季語「鷹」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 鷹

(ひらがな) たか

(ローマ字) taka

 


季 節


 


【分 類】


動物

 


【意味・説明】


人と鷹との関わりは古くからあり、縄文時代には食料としていたと考えられています。

鷹の狩猟能力は優れていたため、訓練をしたうえで鷹狩りに用いられていました。

鷹に関することわざには、次のようなものがあります。

  • 一富士二鷹三茄子:新年の初夢に見ると縁起がよいとされるものを並べた言葉
  • 鳶が鷹を生む:平凡な親からすぐれた子供が生まれることのたとえ
  • 能ある鷹は爪を隠す:真にすぐれた才能を持つ人は、その才能をむやみにひけらかすようなまねはしないというたとえ
  • 鵜の目鷹の目:鵜や鷹が獲物をねらうときの目のように、一所懸命に物を捜し出そうとする様子、また、その目つきのこと
  • 鷹は飢えても穂を摘まず:節操のある人は、どんなに困窮しても不正な金品を受け取るような道義にはずれることは断じてしないというたとえ
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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

青空や鷹の羽せゝる峰の松
(上島鬼貫)

天の川鷹は飼はれて眠りをり
(加藤秋邨)

あら鷹の瞳や雲の行く處
(松瀬青々)

泉への崖鷹の巣の下を落つ
(石田波郷)

いらご崎似るものもなし鷹の声
(松尾芭蕉)

雲海や鷹のまひゐる嶺ひとつ
(水原秋桜子)

尾根めざす鷹捲き上る霧に乗り
(羽部洞然)

檻の鷹まなざし遠く沖見をり
(篠田悌二郎)

きらとする鷹の瞬焔なる
(松瀬青々)

草枯や鷹に隱れて飛ぶ雀
(正岡子規)

渓声に鷹ひるがへる睦月かな
(飯田蛇笏)

さぞ鷹も継尾に木々の生えならび
(広瀬惟然)

しつしつと塒出の鷹やそこいさみ
(正岡子規)

白菊に鷹据はりたる静かなり
(長谷川かな女)

しらくもに鷹まふ嶽の年をしむ
(飯田蛇笏)

新雪や襞ふかく棲む巌の鷹
(河野南畦)

それ鷹の斜めに下りる枯野哉
(正岡子規)

鷹が巣を営む雪解はじまれり
(篠田悌二郎)

高く広く崖を離るる鷹は父
(成田千空)

鷹すでに雲を凌げり雲ながる
(加藤楸邨)

鷹それてむなしく月となる夜かな
(加藤暁台)

鷹とんで冬日あまぬし竜ケ嶽
(前田普羅)

鷹の声青天おつる草紅葉
(相馬遷子)

鷹の巣といふあらあらとしたるもの
(高野素十)

蛇笏忌の翼使はず鷹流る
(殿村莵絲子)

端午とて弥山の鷹のこゑすなり
(水原秋桜子)

躑躅ちり巨杉鷹をとどむなし
(宮武寒々)

鳶の影鷹となりゆく青葉潮
(古舘曹人)

野路の人鷹はなしたるけしき哉
(正岡子規)

はし鷹の拳はなれぬ嵐かな
(正岡子規)

初あらし鷹を入江に吹き落とす
(水原秋桜子)

ひらひらと翔けて鷹鳴く戻り梅雨
(堀口星眠)

吹き亂す吹雪の鷹の鈴暮れたり
(正岡子規)

降る雪や拳の鷹に心問ふ
(野村喜舟)

ブロンクスの鷹がはばたく雪の檻
(田川飛旅子)

ましらふの鷹据ゑて行くあら野哉
(正岡子規)

舞ひいでし鷹にみなぎる峡の晴
(上村占魚)

まぼろしの鷹をゑがくや青伊吹
(森澄雄)

見よ蛇を樹海に落し鷹舞へり
(及川貞)

珍しき鷹わたらぬか対馬船
(榎本其角)

木犀の香に昇天の鷹ひとつ
(飯田龍太)

物云ふて拳の鷹をなぐさめつ
(与謝蕪村)

山遠く白尾の鷹を見送りて
(尾崎紅葉)

病む鷹の継尾ひきずる哀れなり
(内藤鳴雪)

夕雲の高さ得し鷹横すべる
(羽部洞然)

雪ぐせの鷹の羽とつてかへしけり
(原裕)

雪ちるや鷹すえながら酒のかん
(立花北枝)

ゆるやかに舞へるきびしき鷹の羽
(後藤夜半)

横顔を鷹の思想と思ひけり
(辻田克巳)

わろひれす鷹のすわりし嵐哉
(正岡子規)

 


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