ベージュの手袋

手 袋

 

【鑑 賞】 手袋に五指を分かちて意を決す

昭和前期から平成中期にかけての俳人・桂信子(かつらのぶこ)の作品。

  手袋をはめたときの、気持ちの切り替わりが伝わってくる句。

この俳句の趣向と似たものが感じられる作品には、佐藤博美(さとうひろみ)の次の句があります。

 手袋の中の十指も意を固め


手袋の句に「指」が詠まれたものは数多くありますが、その中で「五指」と「十指」が含まれている句をみてみましょう。

愛わかつごと手袋に十指編む
(橋本榮治)

気持ちとは脱いで五指ある手袋よ
(新宮譲)

十指の癖一と冬過ぎし手袋ぬぐ
(橋本多佳子)

十指をば挙げて手套に付しけり
(相生垣瓜人)

手套がつつむ十指寒礁横並び
(三谷昭)

手袋買ふ十指組んだり反らせたり
(谷泰子)

手袋に収めて十指盲ふなり
(上田五千石)

手袋に十指納めて人の死へ
(須田紅三郎)

手袋に十指をおさめ耐えるのみ
(高橋たかえ)

手套脱げば自由の十指月掬ふ
(佐野まもる)

手袋の懈怠許さず五指入れて
(泉田秋硯)

手袋の五指なげうつて五指のこる
(行方克巳)

手袋の十指に分かつぬくみかな
(中村洋子)

手袋を脱ぎて十指に海聞かす
(小澤克己)

 

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以下、季語「手袋・手套」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 手袋・手套

(ひらがな) てぶくろ (手套:てぶくろ、てとう、しゅとう)

(ローマ字) tebukuro

 


季 節


 


【分 類】


人事

 


【意味・説明】


手袋の歴史は古く、古代エジプトのツタンカーメン王の墓から発見されたものが現存しています。

日本では、鎌倉時代に武士が用いた籠手(こて)などをはじめ、15・16世紀に南蛮貿易によって西洋のものが輸入されるようになりました。

手袋に「手套」という漢字をあてることがありますが、「手套」は「てとう、しゅとう」とも読みます。

英語では、親指と他の 4本の指を入れるように二つに分かれている手袋を「mitten」、5本の指に分かれているものを「glove」と呼び分けています。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

大いなる手袋忘れありにけり
(高浜虚子)

大いなる寝手袋をして寝まりけり
(竹下しづの女)

皮手袋の匂ひがわれをへだてゐる
(桂信子)

黒き手套黒き鞄の未婚女醫
(下村ひろし)

黒き手套はめつゝ螺旋階くだる
(岸風三楼)

黒くうすき手袋の手に云ふ別辞
(横山白虹)

黒手袋を見事に落し気がつかず
(田川飛旅子)

悲しみのかたちに置かれ皮手套
(鷹羽狩行)

月光が革手袋に来て触るる
(山口青邨)

けもの臭き手袋呉れて行方知れず
(西東三鬼)

子の中の手袋なき子固拳
(林翔)

衰運の卦の手袋を落しけり
(久保田万太郎)

漂へる手袋のある運河かな
(高野素十)

妻のポケット探せばぬくき手袋など
(香西照雄)

手袋さぐるポケット底があり
(河東碧梧桐)

手袋とるや指環の玉のうすぐもり
(竹下しづの女)

手袋に息つつみ立つ夜の落葉
(堀口星眠)

手袋に年をかくして夫人かな
(星野立子)

手袋のうへより握手君はをとめ
(上村占魚)

手袋の裏のわが色折返し
(後藤夜半)

手袋の片方拾ふてみたものの
(高澤良一)

手袋の手と手袋の手の会話
(稲畑汀子)

手袋の手にはや春の月明り
(中村汀女)

手袋の手の思案して外しけり
(稲畑汀子)

手袋の手をつなぎあふ親子かな
(鈴木真砂女)

手袋の布地薄れし処かな
(高澤良一)

手袋の左許りになりにける
(正岡子規)

手袋は心定めず指にはめ
(中村汀女)

手袋へ紐つけ首へ掛け幼な
(福田蓼汀)

手袋や母情華やぐ席隣る
(石塚友二)

手袋をあちこちと置く卓の上
(久米正雄)

手袋を編みくれし人いまは亡く
(上村占魚)

手袋を買ふも銀座のつれづれに
(星野椿)

手袋を探してばかりゐる日かな
(稲畑汀子)

手袋をしてゐてうっかり落し物
(高澤良一)

手袋をつかみて人を見送りぬ
(長谷川かな女)

手袋をぬぐ手ながむる逢瀬かな
(日野草城)

手袋を脱ぐ妙薬の無かりけり
(松山足羽)

手袋をはめ終りたる指動く
(高浜虚子)

手袋をはめても行手さだまらず
(下村ひろし)

母の眼に青年吾子の大き手袋
(柴田白葉女)

久々の夕日手袋の手をかざす
(細見綾子)

人さかしく帽とるや手袋の手に
(飯田蛇笏)

弊衣無帽無手袋なれど教授なる
(竹下しづの女)

ペンだこに手袋被せてさりげなく
(竹下しづの女)

墓地をゆき黒き手袋をぬがざりき
(橋本多佳子)

街の日は霜にさやけく黒手套
(飯田蛇笏)

身にしむや白手套をみるにつけ
(飯田蛇笏)

冷笑をこらへ手袋はめゐたり
(長谷川かな女)

別れ来し黒き手套を脱ぎてみつむ
(柴田白葉女)

 


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