兎

 

【鑑 賞】 万両やふつと兎の目となりて

昭和中期から平成中期にかけての俳人・平井照敏(ひらいしょうびん)の作品。

万両の赤い実を兎の目に例えたところに面白味が感じられる句。

この句と似た趣向が感じられる俳句作品は、加賀千代女(かがのちよじょ)の次の句。

 万両は兎の眼もち赤きかな


「兎の目」が詠み込まれている俳句としては

あたたかき雪がふるふる兎の目
(上田五千石)

などがありますが、兎の体の部位で圧倒的に多いのは、以下のように「耳」に関するものです。

秋風に兎は耳を立てどほし
(石田勝彦)

争はぬ兎の耳やかたつぶり
(榎本其角)

萱の穂にうさぎの耳も野分哉
(沢露川)

茶の花に兎の耳のさはる哉
(加藤曉台)

つみわたに兎の耳をひきたてよ
(榎本其角)

吹越に大きな耳の兎かな
(加藤秋邨)

子兎の耳へら~と東風の中
(飯田龍太)

水温むらし仔兎の耳の奥
(飯島晴子)

 

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以下、季語「兎」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 兎

(ひらがな) うさぎ

(ローマ字) usagi

 


季 節


 


【分 類】


動物

 


【意味・説明】


兎の特徴は、耳介(じかい:耳のうち、外に張り出ている部分)が大きいことですが、この耳介は、音や風の方へ耳の正面が向くように動かすことができます。

兎を数えるときの助数詞として、かつては「羽(わ)」が使われていましたが、近年は「匹(ひき)」を用いる傾向が強くなりました。

野生の兎は冬に畑の作物などを齧って枯らすため、狩の対象となりました。

このため「兎狩」が冬季に行なわれるようになったことから、「兎」は冬の季語とされています。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

居つゞけに禿は雪の兎かな
(正岡子規)

兎網張り果てし松や冬の山
(大谷碧雲居)

兎親子福寿草亦親子めく
(中村草田男)

兎も片耳垂るる大暑かな
(芥川龍之介)

兎を得ずくさびらなんど得て帰る
(寺田寅彦)

亀は歩み兎は眠る長閑かな
(尾崎紅葉)

元日や忘られてゐし白兎
(飯田龍太)

栗のいが兎の糞や所々
(寺田寅彦)

幻燈や冬木のごとく兔死す
(対馬康子)

声もなく兎動きぬ花卯木
(服部嵐雪)

猿どのの夜寒訪ひゆく兎かな
(与謝蕪村)

柴刈の鼻先をとぶ兎かな
(吉武月二郎)

新涼のましろき兎飼はれをり
(阿部みどり女)

水滴の兎を秋の灯に放つ
(相生垣瓜人)

炭焼が兎の罠を掛けに行く
(滝沢伊代次)

短日の兎に白き山ばかり
(宇佐美魚目)

抱いてゆく兎遊ばす花野かな
(野村泊月)

月の兎皆コスモスに飛ばせたし
(長谷川かな女)

つく~と壁のうさぎや冬籠
(榎本其角)

動物園園児の点呼うさぎの前
(高澤良一)

冬嶺青く睡りさめたる兎の瞳
(加藤楸邨)

どびろくや兎の肉は土臭き
(瀧春一)

人間の足がかかりぬ兎罠
(福田蓼汀)

はつ春やきぎすの係蹄(わな)に山兎
(三好達治)

枇杷の木と兎にありし鞭のあと
(栗林千津)

無月なる庭に出てゐし家兎
(原裕)

山羊を飼へとふ兎飼へとふ春待てば
(及川貞)

山越えて来る獅子舞に兎網
(米沢吾亦紅)

雪の中に兎の皮の髭作れ
(松尾芭蕉)

夜露触る耳を垂らして白兎
(長谷川かな女)

夜ざくらの下にあそべる兎かな
(岸風三楼)

 


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