二つの甕に張った薄氷

薄 氷

 

【鑑 賞】薄氷へわが影ゆきて溺死せり

大正末から昭和後期にかけての俳人・三橋鷹女(みつはしたかじょ)の作品。

「溺死」という言葉の選択に鷹女の個性的な感性が感じられる句。

 

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以下、季語「薄氷」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 薄氷

(ひらがな) うすらい、うすごおり、はくひょう

(ローマ字) usurai usugori hakuhyo

 


季 節


 


【分 類】


地理

 


【意味・説明】


春になってから、寒さが戻って張る氷のことをいいます。


It refers to the ice that forms when the cold returns in spring.

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

泡のびて一動きしぬ薄氷
(高野素十)

薄氷と遊んで居れば肉体なる
(永田耕衣)

うすらひに浮むともなく落椿
(山口青邨)

薄氷に噛み付かん牙風に見つ
(永田耕衣)

うすらひにしはぶきかろくおとしけり
(草間時彦)

薄氷に透けている色生きてをり
(稲畑汀子)

薄氷に遠く日あたる林あり
(桂信子)

薄氷に閉ざして朝の光かな
(稲畑汀子)

薄氷に投げしものなほ乗つてをり
(高浜年尾)

薄氷に空の一隅流れゆく
(古舘曹人)

うすらひに紛れて初の白魚は
(大野林火)

薄氷のありとしもなく陽を映す
(山口青邨)

薄氷の石一つのせ日は暮るる
(山口青邨)

薄氷の上を流るゝ水少し
(星野立子)

薄氷の薄きところを風が裂く
(岸田稚魚)

薄氷の裏を舐めては金魚沈む
(西東三鬼)

薄氷の岸を離れて池心かな
(高浜年尾)

うすらひの季の日のさし櫟山
(岡井省二)

薄氷のとぢたる芹を見出たり
(石川桂郎)

薄氷の宿のくらさに鎧櫃
(古舘曹人)

薄氷やあるまじき我が夢疲れ
(永田耕衣)

薄氷や上を行き来の文房具
(永田耕衣)

薄氷やおもて上ぐれば日没ぞ
(永田耕衣)

薄氷や壁のひとつに鳥瞰図
(古舘曹人)

薄氷や下校の子らを田のとどむ
(石川桂郎)

薄氷や白さきびしき寡婦の足袋
(日野草城)

薄氷や死んで忘るる是ぞ死ぞ
(永田耕衣)

薄氷や人みな蠅となつてみむ
(永田耕衣)

薄氷やまことしやかに恋いわたり
(橋閒石)

薄氷や我が卒塔婆身写し行く
(永田耕衣)

うすらひやわづかに咲る芹の花
(榎本其角)

薄氷や我を出で入る美少年
(永田耕衣)

薄氷を袖にしたるが遣りけり
(永田耕衣)

薄氷をのせたる水の動きけり
(桂信子)

薄氷を踏みて車を発進す
(稲畑汀子)

大粒な霰ふるなり薄氷
(正岡子規)

きゆうたいのへいめんづらや薄氷
(永田耕衣)

雲のみが散る薄氷のほぐるるに
(松村蒼石)

口笛に朝のうすらひ応へなき
(大野林火)

極く近く海を湛へて薄氷
(山口誓子)

しらうをの雫や春の薄氷
(松岡青蘿)

せりせりと薄氷杖のなすまゝに
(山口誓子)

たわたわと薄氷に乗る鴨の脚
(松村蒼石)

つぎつぎと薄氷流れ岸の草
(桂信子)

閉ざすものかなしや玻璃も薄氷も
(山口青邨)

眠りては時を失ふ薄氷
(野見山朱鳥)

光ある中妻子と歩め薄氷期
(中村草田男)

ひるすぎて薄氷えりをはなれけり
(水原秋桜子)

松葉散りうすらひは息ひそめけり
(松村蒼石)

夕雲に浮くうすらひの榛の花
(松村蒼石)

 


【関連季語・子季語】


春の氷

 


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