山笑う
【鑑 賞】 逆光に山笑ひつつ暮れなづむ
明治末から昭和中期にかけての詩人・作家である佐藤春夫(さとうはるお)の作品。
逆光の中を日が沈んでゆく夕暮れ時の情景が目に浮かんでくる句。
以下、季語「山笑う」の解説です。
【表 記】
(漢字) 山笑う
(ひらがな) やまわらう
(ローマ字) yamawarau
【季 節】
春
【分 類】
地理
【意味・説明】
「山笑う」は、春の山の様子を擬人化して表現した季語です。
“Yamawarau” is a season word expressing the appearance of the Mountain of Spring as anthropomorphic.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
青啄木鳥のこゑ透り山笑ひけり
(堀口星眠)
天鈿女命笑へば山笑ふ
(堀口星眠)
一片の転勤辞令山笑ふ
(辻田克巳)
岩山と言ひて岩あり山笑ふ
(山口青邨)
牛小屋に牛の新角山笑ふ
(皆吉爽雨)
お目当は菜飯田楽山笑ふ
(百合山羽公)
稚子達に山笑ふ窓を開きけり
(村上鬼城)
胸襟をやうやく開き山笑ふ
(松山足羽)
切口の大円盤や山笑ふ
(阿波野青畝)
雲かげのとんで次第に笑ふ山
(高浜年尾)
継体天皇杖に立ちまし山笑ふ
(松山足羽)
西行の命なりける山笑ふ
(百合山羽公)
三畳の仏間より見え山笑ふ
(長谷川双魚)
島山の笑ふをながめ磯づたひ
(上村占魚)
太陽を必ず畫く子山笑ふ
(高田風人子)
初空や袋も山の笑ひより
(加賀千代女)
腹に在る家動かして山笑ふ
(高浜虚子)
人乗せて馬の機嫌や山笑ふ
(長谷川かな女)
昼すぎて山の笑ふは憂かりけり
(栗林千津)
蒲団着て山笑ふ姿や東山
(正岡子規)
故郷やどちらを見ても山笑ふ
(正岡子規)
穂が抜ける矢立の筆の山笑ふ
(野村喜舟)
ほろ~と土まろばせて山笑ふ
(星野立子)
妙法蓮華経と谺山笑ふ
(阿波野青畝)
村一の長寿の父に山笑ふ
(山田弘子)
村人の知恵のかぎりを山笑ふ
(能村登四郎)
もうそろそろ山が笑ふと胡桃の木
(高澤良一)
喪の年となりし今年も山笑ふ
(仙田洋子)
山笑ふ赤きのぼりがはためきて
(細見綾子)
山笑ふ神の茸ぞ命継げ
(角川源義)
山笑ふ聴けばきこゆる雨の音
(千代田葛彦)
山笑ふ今日の日和や洗ひ張
(井上井月)
山笑ふことに雑木の明るさに
(安立公彦)
山笑ふ子供千人隠れゐて
(平井照敏)
山笑ふ転び上手の怪我もせず
(鈴木真砂女)
山笑ふ歳月人を隔てけり
(鈴木真砂女)
山笑ふ里人これに応へたり
(高浜年尾)
山笑ふ静けさに人働けり
(玉木春夫)
山笑ふつなぎとめられ石切夫
(平畑静塔)
山笑ふとはこの景と思ひけり
(高木晴子)
山笑ふ中に富士見て下りけり
(長谷川零餘子)
山笑う梯子のかかり具合かな
(永末恵子)
山笑ふ日や放れ家の小酒盛
(井上井月)
山笑ふふるさとびとの誰彼に
(楠本憲吉)
山笑ふ奉納の能進みをり
(大野林火)
山笑ふわが顔避けて鏡傷
(河野南畦)
山笑ふわがふるさとは京に似し
(山口青邨)
余生とは歩くことらし山笑ふ
(清水基吉)
夜泣石いくつもありて山笑ふ
(百合山羽公)
笑ふ山に向けし遅筆の机かな
(鈴木真砂女)
【関連季語・子季語】
笑う山
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