息白し
【鑑 賞】息白し人こそ早き朝の門
大正時代から昭和末期にかけての俳人・中村汀女(なかむらていじょ)の作品。
冬の朝の厳しい寒さが伝わってくるような句。
以下、季語「息白し」の解説です。
【表 記】
(漢字) 息白し
(ひらがな) いきしろし
(ローマ字) ikishiroshi
【季 節】
冬
【分 類】
人事
【意味・説明】
「息白し」は、比較的新しい季語です。
“Ikishiroshi” is a relatively new season word.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
相見るやあたゝかきまで息白し
(清水基吉)
歩くことが大事歩けば息白し
(岸田稚魚)
ある夜わが吐く息白く裏切らる
(加藤秋邨)
家を出る門を一歩の息白し
(高浜年尾)
息白くいささか年を取りながら
(京極杞陽)
息白く命を惜しむにも似たり
(村山故郷)
息白く牛連ればかり霧島路
(殿村莵絲子)
息白く多くを言ふはあはれなり
(殿村菟絲子)
息白く恐れげもなく答へたる
(星野立子)
息白く甲斐甲斐しさの人に伍し
(中村汀女)
息白く子に書きおくること多し
(加藤秋邨)
息白く妻が問ふよく寝ねしやと
(日野草城)
息白く長くわが生確かむかな
(大野林火)
息白く泣けば女体はぬくもらむ
(加藤秋邨)
息白く七日の家長家を出づ
(石田波郷)
息白く飲屋無縁の夜の道
(能村登四郎)
息白く未知の校門子はゆけり
(及川貞)
息白く目角たてて罵れり
(上村占魚)
息白くやさしきことを言ひにけり
(後藤夜半)
息白く寄ればゆらぎて空也像
(宇佐美魚目)
息白くわらわら帰る祭あと
(角川源義)
息白し愛語こころにこもりゐて
(飯田蛇笏)
息白し息巻くとにはあらざるに
(相生垣瓜人)
息白しいつまで残る明星ぞ
(中村草田男)
息白し乙女と語るわが童児
(石田波郷)
息白し汽罐車がわが前にゐて
(鷹羽狩行)
息白し根本中堂常闇に
(高澤良一)
息白ししづかに吐いてみても白し
(加倉井秋を)
息白したばこ火口の辺にともる
(大野林火)
息白しポイ捨て御免合点だ
(阿波野青畝)
息白し夕日まだらの禽獣界
(大野林火)
息白し酔ひてもサラリーマンの貌
(草間時彦)
息白しわれとわが袖かきいだき
(久保田万太郎)
生れ来て五十日縷々と息白し
(山口誓子)
君煙草口になきとき息白し
(星野立子)
撃剣の面を溢れて息白し
(田川飛旅子)
心見せまじくもの云へば息白し
(橋本多佳子)
小鼓を打ち終はりても息白し
(井上雪)
最澄の書に息あはせ息白し
(宇佐美魚目)
さし寄せし暗き鏡に息白し
(中村汀女)
生徒等のいま反抗期息白く
(木村蕪城)
誰よりも我が息白し女を待つ
(右城暮石)
丹波より来て玄関に息白し
(右城暮石)
地を擦つて来たりしものら息白し
(栗林千津)
妻の息白し寒厨氷点下
(日野草城)
橋をゆく人悉く息白し
(高浜虚子)
鳩籠に少年の息白く迅し
(石田波郷)
髯のびて息白くからむ病み給へり
(大野林火)
左頬を向くる勇無く息白し
(阿波野青畝)
矢絣や妹若くして息白し
(中村草田男)
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