白い息
【鑑 賞】深井戸に降る月光と白息と
昭和中期から平成中期にかけての俳人・中村苑子(なかむらそのこ)の作品。
静かで寒い冬の夜の情景が目に浮かんでくる句。
以下、季語「白い息・白息」の解説です。
【表 記】
(漢字) 白い息 白息
(ひらがな) しろいいき しらいき
(ローマ字) shiroiiki・shiraiki
【季 節】
冬
【分 類】
人事
【意味・説明】
「息白し」と同様に、「白い息、白息」も比較的新しい季語です。
Like “ikishiroshi”,”shiroiiki, shiraiki” is also a relatively new season word.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
朝はまだ白息からまつ芽ぶくもと
(大野林火)
怒りたるごとき白息吐きもせり
(岸田稚魚)
今の世の白息壺の底に入るる
(加藤秋邨)
牛と仔馬わが白息も片流れ
(中村草田男)
襟に幣さし白息の情け言
(友岡子郷)
遠足の子が吐き競ふ夜の白息
(右城暮石)
餓鬼鴉われの白息奪はれじ
(村越化石)
元日の白息を見す赤子かな
(岸田稚魚)
砂丘のぼる白息逃がるるに似たり
(松崎鉄之介)
白息尽きずマラソンゴールして歩む
(平畑静塔)
白息とその鼻見えておのれあり
(能村登四郎)
白息の一条やがて透明に
(高澤良一)
白息の声音の低く靱かりき
(岸田稚魚)
白息も青む杉山に入りしより
(能村登四郎)
白息も上下す潟の竹簀編
(能村登四郎)
白息やこの木より蛇落ちきしと
(宇佐美魚目)
白息や生徒あざむく容易なり
(辻田克巳)
白息や男女学生紺同色
(草間時彦)
白息や友よりの金手にし収む
(清水基吉)
白息やふたたび死なず波郷死す
(平畑静塔)
白息やわれに挙げきし右手左手
(加藤秋邨)
白息を大きく吐きて意を決す
(岸田稚魚)
白息を雲のごと吐き杉磨く
(殿村菟絲子)
白息を交互に吐きて鉄板打つ
(西東三鬼)
白息を殺して詰める登窯
(松崎鉄之介)
白息を鎮め静めて告ぐるなし
(上田五千石)
白息を吐きつ一体馬と騎手
(高澤良一)
白息をまづしく妻も勤めの歩
(柴田白葉女)
白い息帰命頂礼一斉に
(阿波野青畝)
白い息一言主へ名告りけり
(阿波野青畝)
枯山水見て白息を肥しけり
(百合山羽公)
仰臥より白息高く立ち騰る
(山口誓子)
燦爛と起重機上に白息す
(加藤秋邨)
熟睡して子の白息も年を越す
(森澄雄)
主婦二人一人はわかれたき白息
(加藤秋邨)
松籟や白息互みにながし佇つ
(石田波郷)
千人針縫ふに白息とどこほる
(萩原麦草)
溜息の如白息の如噴煙
(殿村莵絲子)
父の眼に戻り昏々と白息はく
(田川飛旅子)
包むとき両掌をこぼれ白き息
(稲畑汀子)
とどまらぬ時空の間に白息す
(岸田稚魚)
泣きしあとわが白息の豊かなる
(橋本多佳子)
何おもふ白息をふと世に洩らし
(加藤秋邨)
伐折羅吐きたまふ白息なかりけり
(阿波野青畝)
埴輪には白息もなし黄泉の民
(平畑静塔)
棒のごとき白息何もかもこばむ
(高澤良一)
待ち針に白息かかるたび曇る
(田川飛旅子)
未完成の船の奥にて白息吐く
(西東三鬼)
夕日の道白息洩らす病夫人
(大野林火)
わが書きし字へ白息をかけておく
(加藤楸邨)
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