小 春
【鑑 賞】句を愛し小春を愛し人愛し
昭和前期から令和初期にかけての俳人・星野立子(ほしのたつこ)の作品。
作者の穏やかな心境が感じられる句。
以下、季語「小春」の解説です。
【表 記】
(漢字) 小春
(ひらがな) こはる
(ローマ字) koharu
【季 節】
冬
【分 類】
時候
【意味・説明】
「小春」は旧暦の 10月の異称です。
冬の初めの穏やかで暖かい陽気を表現する季語です。
“Koharu” is another name for October in the lunar calendar.
It is a seasonal word that describes the mild, warm weather of the beginning of winter.
【俳句例】
※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。
池の水障子に映る小春哉
(寺田寅彦)
売り出しの旗や小春の広小路
(正岡子規)
大寺の縁広うして小春かな
(正岡子規)
沖がかる船に槌音小春凪
(五十嵐播水)
廻廊に銭の落ちたる小春かな
(正岡子規)
かくれ家の折戸より見え小春富士
(野村泊月)
きのふ他人今日は小春の夫と妻
(長谷川かな女)
暮れそめて馬いそがする小春かな
(高井几董)
故人と居る思ひ小春の白障子
(村越化石)
小鼠よ小春何も無き台所
(渡辺水巴)
小春ともいひ又春の如しとも
(高浜虚子)
小春凪つづきてえりもゆるびそむ
(能村登四郎)
小春の鎌倉きっと好きでせうこの空も
(及川貞)
小春の旅長き汀に終りけり
(大野林火)
小鳥の鳶なぶりゐる小春哉
(正岡子規)
小春鳩頸の緑金揺り内足
(香西照雄)
小春よき相模の国や年の市
(原石鼎)
山茶花を孝女たびけり小春凪
(中勘助)
さをしかのしの字に寝たる小春哉
(小林一茶)
死にかたをこころに浮べ老小春
(富安風生)
柴舟に山枯色や小六月
(東洋城千句)
島がくる帆に色強し小春灘
(原石鼎)
下総に一日遊ぶ小春かな
(正岡子規)
十年一トむかしとこそ小春かな
(久保田万太郎)
城下町小春の小鳥鳴きにけり
(吉武月二郎)
宍道湖に機嫌の波の小春かな
(石塚友二)
杉垣へ桜落葉の小春かな
(尾崎迷堂)
住みつきて芭蕉玉巻く小春かな
(渡辺水巴)
先生と話して居れば小春哉
(寺田寅彦)
俗名と戒名睦む小春かな
(中村苑子)
棚藤もつかね上げたる小春かな
(金尾梅の門)
月の鏡小春に見るや目正月
(松尾芭蕉)
どの道をゆくもかへるも園小春
(上村占魚)
ともどもに月日はるけき小春かな
(飯田龍太)
仲見世の猿のおもちゃに小春の日
(高澤良一)
波しぶきあげて小春の垣根かな
(西山泊雲)
南殿の御格子かゝぐ小春哉
(寺田寅彦)
ねがはくは小春のやうな句とこころ
(河野静雲)
橋立の根にかたまりて茶屋小春
(西山泊雲)
橋と橋の間の道の小春哉
(内田百間)
はせを忌の小春小島へ目を流す
(岸田稚魚)
はて薬飲みしか小春の朝餉あと
(高澤良一)
晩年のひと日小春谷すぐ昃り
(福田蓼汀)
ひそくさと小僧小春の障子外
(西山泊雲)
富士よりも浅間親しも小春縁
(福田蓼汀)
塀ぎはに萌黄のしるき小春かな
(室生犀星)
ぽかりぽかり小春木かげの檜薪わり
(中勘助)
まだ羅府にあると思へず小六月
(高浜年尾)
ままかりの酢の香これまた小春かな
(飯田龍太)
毬弾む己が小春の影曳いて
(加藤楸邨)
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