うっすらと雪が積もった道

淡 雪

 

【鑑 賞】 淡雪やかりそめにさす女傘

大正前期から昭和中期にかけての俳人・日野草城(ひのそうじょう)の作品。

女傘(おんながさ)」が何とも艶めかしい句。


「かりそめ(仮初、苟且)」とは、「一時的なこと、その時かぎりであること、はかないこと」を意味します。

この言葉が、積もることなく消えていってしまう淡雪のイメージと見事に重なります。

さらには、女傘の持ち主との未来にも「はかなさ」が感じられるように思えます。

「女傘」が詠み込まれた俳句には、風情のあるものが多いので、いくつかを味わってみて下さい。

置忘れ来し十六夜の女傘
(岸田稚魚)

女傘借りて見てをり花菖蒲
(清水基吉)

女傘さして出でたる雨月かな
(加藤霞村)

女傘さして花人酔へるかも
(山口青邨)

女傘浪に千鳥の春の雪
(岡本松浜)

下町や殊にしたたる女傘
(橋閒石)

 

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以下、季語「淡雪」の解説です。

 


【表 記】


(漢字) 淡雪

(ひらがな) あわゆき

(ローマ字) awayuki

 


季 節


 


【分 類】


天文

 


【意味・説明】


淡雪とは、春先に降って、すぐに消えてしまうような雪のことをいいます。

そして、淡雪は「ぼたん雪」「綿雪」と呼ばれることもあります。

また、「沫雪」「泡雪」は、あわのように軽くてとけやすい雪のことです。

和菓子の一種に、淡雪(あわゆき)という名前のものがあり、淡雪羹(あわゆきかん)とも呼ばれます。

これは羊羹(ようかん)の一種で、舌触りが春の雪のように溶けやすいということから名づけられたものです。

地域によっては、「泡雪」「泡雪羹」「阿わ雪」とも表記されます。

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【俳句例】


※ 有名俳人の俳句を中心に集めました。

淡雪に母臨終の静かなる
(長谷川かな女)

淡雪のうしろ明るき月夜かな
(正岡子規)

淡雪の昨日を遠くして日和
(稲畑汀子)

淡雪の空の明るき手まり唄
(柴田白葉女)

淡雪の積らんとして力なし
(高浜年尾)

淡雪のつもる白さや夕まぐれ
(原石鼎)

淡雪のつもるつもりや砂の上
(久保田万太郎)

淡雪の寺々めぐりやつれけり
(室生犀星)

淡雪の友や高みを少し落つ
(永田耕衣)

淡雪の中に来て居し電車かな
(前田普羅)

淡雪の濡らせし夜の枝のこまやか
(岸田稚魚)

淡雪のやみたる草に夕日かな
(芝不器男)

淡雪やうたふガラスのオルゴール
(仙田洋子)

淡雪や通ひ路細き猫の恋
(寺田寅彦)

淡雪や消えも且降る眼もあやに
(東洋城千句)

淡雪や曇る玻璃戸に談笑す
(高濱年尾)

淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈
(臼田亞浪)

淡雪や掌にのる程の小鳥塚
(富安風生)

淡雪や何を紅かる野路の宮
(尾崎迷堂)

淡雪や軒に干したる酒袋
(井上井月)

淡雪や橋の袂の瀬多の茶屋
(井上井月)

淡雪や女雛は袂うち重ね
(臼田亞浪)

淡雪を男の髪に艶と見る
(富安風生)

淡雪を駈けぬけて来し妻の髪
(皆川白陀)

いさはやの葉や淡雪も消がてに
(服部嵐雪)

己が句の春淡雪や氷水
(尾崎迷堂)

汁粉できて竹の淡雪凍りけり
(渡辺水巴)

椿濃く淡雪樹々を濡らしけり
(西島麦南)

雪あはく画廊に硬き椅子置かれ
(山口誓子)

夜はかなし淡雪明り瞳にぞ馴れ
(三橋鷹女)

 


【和歌・短歌の中の「淡雪」】


淡雪に
降らえて咲ける梅の花
君がり遣らばよそへてむかも
(角朝臣廣辨)

沫雪の
消ぬべきものを今までに
流らへぬるは妹に逢はむとぞ
(大伴田村大嬢)

淡雪の
このころ継ぎてかく降らば
梅の初花散りか過ぎなむ
(坂上郎女)

淡雪の
庭に降り敷き寒き夜を
手枕まかずひとりかも寝む
(大伴家持)

淡雪の
ほどろほどろに降りしけば
奈良の都し思ほゆるかも
(大伴旅人)

十二月には
淡雪降ると知らねかも
梅の花咲くふふめらずして
(紀少鹿女郎)

 


【関連季語・子季語】


初雪

  雪見  雪だるま  雪解け

春の雪

 


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